人生100年時代、最近は70代になっても80代になっても元気なお年寄りも増えてきました。しかし、そうはいっても人間は年を重ねれば着実に衰えていくもの。きっと、みなさんの中にも高齢になった親の健康状態を心配している人がいらっしゃるのではないでしょうか。 本稿は『在宅医療のエキスパートが教える 年をとったら食べなさい』から一部抜粋・再構成してお届けします。 ■「病気」よりも「やせ」が危ない? 高齢の親にできるだけ長く健康でいてもらうために、いちばん気をつけておかなくてはならないことは何なのか、みなさんはご存じですか?
じつは、もっとも注意すべきが「低体重」、すなわち、「やせてしまうこと」なのです。日本には、60代を過ぎ、70代、80代の高齢になると「もういい年なんだから、年相応、少ない量を食べればいいんだ」と食事量を落とし、体重を落としてやせていってしまう人が少なくありません。ただ、やせて体重が落ちてくると、低栄養状態になり、筋肉量が落ち、運動機能が低下していく……。そういう悪循環にハマってどんどん弱っていってしまうケースが非常に多いのです。
高齢者にとって低体重が危険なことは、データにも表われています。みなさん、BMI(ボディ・マス・インデックス)をご存じですね。そう、身長(m)を2乗して体重で割ると求められる値です。一般的には、BMI22が、病気のリスクがもっとも低くなる「標準体型」とされていて、BMIが25を超えると「肥満」、18.5を下回ると「やせ」とされています。ところが、高齢者の場合、BMI27の「ちょい太め」「軽度肥満」くらいがもっとも死亡リスクが低くなるのです。
つまり、高齢者の場合、「BMI22の標準体重=いちばん健康」とは限らないということ。文部科学省の研究班が65~79歳の高齢者を11年間調査した研究では、「男性はBMI27.5~29.9、女性はBMI23.0~24.9のとき、いちばん死亡リスクが低い」という結果が出ています。また、この研究では、高齢者では太っていると死亡リスクが低くなり、やせていると死亡リスクが高くなるという傾向も明らかになっています。
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