Saturday, December 11, 2021

カタ麺は頼むな!? ラーメンをもっと美味しく食べる3つの「裏技」(山路力也) - 個人 - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

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ラーメンは自由な食べ物だ

メニューは端に書かれているものを食べるのが基本だが…。
メニューは端に書かれているものを食べるのが基本だが…。

 ラーメンは自由な食べ物である。ラーメンの食べ方は人それぞれ。自分の好きなように食べるのが、一番美味しいと感じる食べ方であることは否定しない。しかしながら、もっと美味しく食べるための「コツ」のようなものは間違いなく存在する。

 筆者はラーメン評論家として、20年以上にわたり様々なラーメンを食してきた。その中でラーメンをもっと美味しく食べるにはどうしたら良いかを考えてきた。世のラーメン店主たちは、ラーメンが日々もっと美味しくなるように腕を磨き、味の改良を重ねている。ならば、食べ手である私たちもアップデートしていかなければならないのではないか。

 繰り返すが、ラーメンの食べ方は人それぞれだ。しかし、時には違う食べ方をすることで、同じラーメンなのにまったく違った味に感じるかもしれない。いつものラーメンを食べているのに、新しい感動に出会えるかもしれない。今回はラーメンをもっと美味しく食べるために、私が実践していることを皆さんにも提案したい。

まず、メニューは何を選ぶべきか?

『創始麺屋武蔵』(新宿区)の「武蔵ら〜麺」。武蔵では屋号のついたメニューを頼むべし。
『創始麺屋武蔵』(新宿区)の「武蔵ら〜麺」。武蔵では屋号のついたメニューを頼むべし。

 まずはメニュー選びから。初めて行ったお店で、数あるラーメンの中から何を選ぶべきか。ラーメンマニアの定石は「メニューの一番上、端にあるもの」「一番シンプルなもの」を選ぶ、ということになっている。言うまでもなく、ラーメンの主役は麺とスープである。余計なトッピングの乗っていない、ノーマル(デフォルト)のラーメンを頼むことで、麺とスープに集中することが出来るからだ。

 昨今のラーメン店のメニューは、ノーマルのラーメンの他に「味玉ラーメン」「チャーシュー麺」「スペシャル(全部入り)ラーメン」など、具材を追加増量したバリエーションで構成されていることがほとんどだ。チャーシュー麺ならば、通常1枚のチャーシューが5枚増量されているような。まずは基本のラーメンを食べて、2回目以降に好みだった具材を増量したものを頼めば良い。

 しかし、店によっては単なる増量のバリエーションではなく、ノーマルのラーメンには乗らない別仕込みの具材が乗るラーメンが存在する。例えば『麺屋武蔵』の系列店には、各店舗の屋号がついたラーメンがあるが、通常のチャーシューとは違う角煮などの特別な具材が、そのラーメンだけのために仕込まれている。価格はもちろんノーマルのラーメンより高いが、その満足度は価格差以上だ。

『桂花ラーメン』でまず食べるべきは、ズバリ「太肉麺」だ。
『桂花ラーメン』でまず食べるべきは、ズバリ「太肉麺」だ。

 『麺屋武蔵』からすればその屋号メニューこそ、客に食べて欲しいラーメンなのだが、どうしても原価がかかるため売価も高くなる。だから特別な具が乗らないノーマルのラーメンも置いているのだ。他の店でも、野菜との一体感を楽しんで欲しい「タンメン」や、丁寧に仕込んだ「ワンタン麺」など、本来食べて欲しいメニューがノーマルのラーメンとは限らないケースは多い。チャーシュー麺のチャーシューは別仕込み、という店もある。

 例えば、熊本ラーメンの老舗『桂花ラーメン』は、柔らかな角煮と生キャベツ、しっかりと味が染みた煮卵が乗ることで有名だが、通常の「桂花拉麺」にはそれらの具材は乗らず、『太肉麺(ターローメン)』と呼ばれる特別なラーメンにだけ乗る。このメニューは1968(昭和43)年に東京進出した際に考案されたものだが、今では『桂花ラーメン』の看板メニューになっている。

 初めて行く店ではノーマルのラーメンを頼むのが基本姿勢ではあるが、このようにノーマルのラーメンではその店のポテンシャルや想いが分からない場合が少なからず存在する。事前にメニューなどを良くチェックして、その店が一番力を入れているラーメンを選びたいところだ。

スープを美味しく飲むためにすべきことは?

卓上にあるものはすべて使うべし。
卓上にあるものはすべて使うべし。

 スープを美味しく飲むための基本姿勢としては、まず麺を引き上げたり具材を触る前に、綺麗なスープを一口啜ること。そして卓上の調味料などはいきなり使わないことなどが挙げられる。ラーメンマニアの中には調味料を一切使わずに食べ切る人も少なくない。実際私も最初はそうだった。極力スープを汚さずに食べてこそ、正しいラーメンとの向き合い方なのだと頑なに信じていた。

 しかし、今から20年ほど前に眼から鱗の出来事があった。『博多一風堂』の創業者である、河原成美氏と一風堂のラーメンを食べた時のことだ。食べたラーメンは看板メニューである豚骨ラーメンの「白丸元味」。当然私は調味料などは一切使わずにまずはスープから、と思ったその時である。

 目の前に座っていた河原氏が「あ、ちょっと待って。胡麻は嫌い?」と言いながら、卓上にある「すり胡麻器」を手にして私のラーメンの上で胡麻をすり始めたのだ。さらに「ニンニクも美味いよ」と言いながら、ガーリックプレスでニンニクを一搾り。「辛モヤシや高菜もおすすめ」と言いながら、私の前に壺を差し出したのだ。

 今まではラーメンに何か余計なものを加えることは、ラーメン屋さんが一生懸命取ったスープを汚すことになると思っていた。しかし、その作り手本人がラーメンを食べる前から胡麻やらニンニクやらを乗せまくることに衝撃を受けた。そのことを河原氏に伝えたところ「ラーメンに色々加えて楽しんでもらいたいから、わざわざ卓上に置いているんだよ」との答え。

 確かにそうでなければ、わざわざコストのかかる胡麻やニンニク、高菜などは卓上に置く必要がない。このラーメンに合う、合わせて欲しいと思ったものを、店側が卓上に置いているということに気づいたのだ。そして入れたことによる味の変化の楽しさも知ることが出来た。卓上にあるものはお店のオススメと考えて、自分なりの組み合わせで味の変化を楽しんで欲しい。

勇気を出してそのレンゲから手を放してみよう。
勇気を出してそのレンゲから手を放してみよう。

 そしてスープを飲む上でオススメしたいこと。それは「レンゲを使わない」ことだ。もちろんレンゲが出されているのだから、使うことそのものは悪くない。化粧をしている女性や、猫舌の人など熱いものが苦手な人にはレンゲの使用は必須だろう。しかし、可能であれば一度レンゲを使わずに丼から直接スープを飲んで欲しいのだ。

 レンゲで飲むスープと丼から直接飲むスープでは、同じスープなのに味が違って感じることにきっと驚くはずだ。温度の違いや口の中に入ってくる量の違い、さらには鼻から入ってくる香りの量も違う。かつて『家系ラーメン』店にはレンゲは置かれていないのが普通だった。口をベトベトにしながらたっぷりとスープを啜るのはまさに至福のひと時で、レンゲを頼む人を哀れんでいたものだ。

 お酒などがグラスや酒器によって味の違いがあるように、ラーメンのスープも飲み方一つで味が変わる。どちらが好みかは別として、味の感じ方は絶対に変わるので、「丼から直接スープ」をぜひ一度試して欲しい。

麺の美味しい茹で加減と食べ方は?

お好みを聞かれても、初めての店ではすべて「普通」を頼むべし。
お好みを聞かれても、初めての店ではすべて「普通」を頼むべし。

 最近では好みの麺の茹で加減を選べる店が増えてきた。以前は「博多ラーメン」店や「家系ラーメン」店の専売特許のようなものだったが、それ以外のラーメン店でも麺の茹で加減を聞く店が増えている。また、聞かれなくても「麺硬めで」などと客側から要望するケースも少なくない。

 麺の茹で加減における基本姿勢は、言うまでもなく「普通」だ。ラーメンの麺はしっかりと茹でるのが基本であり、また麺の適切な茹で時間はその日の気候や麺の状態によって日々変わる。それを理解しているのはラーメン店である以上、麺の茹で加減に関してはプロに任せるのが間違いない。

 一度「普通」で頼むことで「その店の普通」が分かる。それを基準にして2回目以降に好みがあればオーダーするのも良いだろう。ただし、繰り返すがラーメンの麺はしっかりと火を入れて茹でることで完成するため、茹で加減が甘いと消化不良でお腹を壊すこともある。店側も客側も時に麺のコシを硬さと勘違いしている場合があるが、しっかりと茹でることで生じた弾力ある食感こそコシなのだ。硬めを頼む時は信頼の出来る店でお願いするべきだ。

『麺の坊 砦』では替玉が必須だ。
『麺の坊 砦』では替玉が必須だ。

 ただし、博多ラーメン店の場合は敢えて「硬め(カタ)」を頼むのも楽しい。自分好みの硬さを探すのも、博多ラーメンの楽しみ方であり文化の一つでもある。そして通常の麺と比べて麺線が細く加水率も低い博多ラーメンの麺であれば、硬めに茹でても消化不良にはなりにくい。

 博多ラーメンと言えば替玉だが、最初は硬めで頼んで替玉では硬めに頼むなど、同じ麺の異なる食感を楽しむことが出来る。また、神泉にある博多ラーメン店『麺の坊 砦』では、麺を2種類から選ぶことが出来る。形状が異なっているので、1玉目と替玉で麺を変えることで違った味わいが楽しめるのだ。

 ラーメンは自由な食べ物である。ラーメンの食べ方は人それぞれ。自分の好きなように食べれば良い。しかし、時には違う食べ方をすることで、いつも食べているラーメンに新たな発見がある。それによってますますラーメンが楽しくなることを保証する。

※写真は筆者によるものです。

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