瑞牆山(みずがきやま)=山梨県北杜市、標高2230メートル=の山頂に、登山シーズンになると弁当をついばんだり、手に乗ったりする野鳥がいる。こうした人なれした行動について、専門家は人が意図的に餌を与え続けた「餌付け」の結果で、「生態系の保護や感染症対策の点で問題がある」と指摘する。登山者らにとって「癒やし」の存在も、自然保護の観点からは歓迎すべき状況とは言えないようだ。【照山哲史】
瑞牆山への登山者らが利用する富士見平小屋(標高1812メートル)によると、野鳥はスズメとほぼ同じ大きさのコガラやシジュウカラなどだ。食べている弁当を狙って近付き、ご飯粒やおかずをついばんだり、手に乗って餌を食べたりする話を、下山してきた登山者からよく聞くという。
同小屋の話では、こうした野鳥の目撃例は登山シーズン(春から晩秋)の終わりごろになると多くなる。春ごろには野鳥が警戒しているのかあまり人に近付かないが、多くの登山者でにぎわう夏を過ぎ、秋になると「人なれ」してくるらしい。
記者も2021年11月23日、登頂した際にコガラに遭遇した。強風を避けて岩陰でコンビニ弁当を食べようと腰を下ろしたところ、数十センチほどの距離で周囲を飛び回る小鳥に気づいた。リュックから取り出したカメラで撮影しようとした時に、膝の上に置いた弁当の縁にとまり、ご飯粒をついばむのが確認できた。
コガラなどの振る舞いについて、山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)の平岡考(たかし)広報コミュニケーションディレクターは「手に乗って餌をとる野鳥の行動は、人が相当粘り強く餌を与え続けないと起きない」として、このコガラが「餌付け」されていると分析する。
野鳥の生態に詳しい「やまなし野鳥の会」によると、県内の山々で野鳥の同様行動の報告例はなく、このコガラは冬季には低山帯に移動しているとみられるという。そのうえで、同会の窪田茂会長は「山頂という場所から特定の人が餌付けしたというより、多くの登山者でにぎわう夏に一部の登山者が弁当のおかずをあげるなどして餌付いてしまったのでは」と推測する。
「餌付け」については、人が楽しむために鳥類や哺乳類などの野生動物に餌を与えた結果、人から弁当を強奪するなど人と動物があつれきを生じるケースが各地で報告されてきた。平岡さんは「野生動物は一般的に餌を与えてかわいがるものという考え方は改める必要がある。弁当などを通じて人と野生動物が『間接キス』する状況は感染症対策上も望ましくない」と警告する。
また、「日本野鳥の会」普及室の江面(えづら)康子さんは「餌付けされた種類だけが増えて生態系のバランスを崩してしまう懸念がある。また自然の姿を見ることを楽しみにしている人たちにとっては人の手が加えられた状況を観察することになる。野生動物にとっても人間にとっても好ましいことではない」と話している。
からの記事と詳細 ( 山頂で弁当を食べると手に小鳥が…餌付けの結果? 専門家の警告 - 毎日新聞 - 毎日新聞 )
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