天然痘(疱瘡(ほうそう))で亡くなった人の遺体を墓から掘り返して食べた――。宮城の説話に登場する「疱瘡婆(ほうそうばば)」。恐ろしくも謎に包まれた妖怪だが、当時の疫病に対する人々の恐怖心が垣間見え、新型コロナウイルスの感染拡大に戸惑う現代人にも通じるところがある。【滝沢一誠】
19世紀初め、七ケ浜の大須で天然痘が流行し、多くの人々が毎日のように亡くなった。そんな中、埋葬した遺体が次々と掘り返され、骨まで食い荒らされた。重い石を乗せても掘り返され、いつしか「疱瘡婆が天然痘をはやらせて、感染した死者を食べている」とうわさが立った。
疱瘡婆は村人の機転である日を境に姿を見せなくなったが、3年後に女性が「赤い顔色で白髪、身長1丈(約3メートル)の女を見たことがある」と打ち明けた。「あの死体を掘り返して食う妖怪に違いない。当時は恐ろしくなって気を失ってしまったが、今になってようやく話せた」
郷土史家は「聞いたことがない」
この話は江戸後期に江戸や仙台で活躍した女性作家、只野真葛(まくず)が耳にした東北の不思議な話を集めた「奥州ばなし」に収められている。場所は現在の宮城県七ケ浜町という説や、大須地区のある石巻市雄勝町という説がある。しかし、郷土史に詳しい専門家は「そのような話は聞いたことがない」。この文献以外に明確な伝承はない。
天然痘の患者が日本で最後に確認されたのは1955年。しかし、予防接種の種痘が普及する前は一生に一度はかかり、完治後も体にあばたが残る病として恐れられた。「宮城県史」によると、疱瘡婆が目撃された年代に近い、享和2(1802)年や文化9(1812)年に仙台藩で流行している。史料に残っていない局所的な流行もあったようだ。
祈ると天然痘が治るという神をあがめたり、天然痘そのものを疫病神として神格化したりする「疱瘡神信仰」が各地で起き、疱瘡神が嫌うとされる赤色が信仰のシンボルとなった。県内でも牡鹿半島の大六天山には天然痘の守護神をまつった神社が建っている。
「奥州ばなし」の現代語訳を「只野真葛の奥州ばなし」(荒蝦夷(えみし))として出版した作家の勝山海百合(うみゆり)さんは「一種のまじないとして遺体を食べた人がいたのでは」と推理する。同じ病気で亡くなった人の遺体を食べることで病気が治るという迷信は古くからあるという。
「掘り返すな」の戒め込めた?
イラストレーターの「大蛇(おろち)堂」さん(37)は8月、仙台市内で開いた個展で疱瘡婆の絵を公開した。「もしかしたら疱瘡婆は『遺体を掘り返してはいけない』という戒めを込めて作り上げられたのかも」。現在のアマビエブームの立役者の一人でもある彼は、アマビエとは正反対の妖怪を、真っ赤なおどろおどろしい姿で描いた。
勝山さんは「この話に教訓があるとすれば『慌てるな』。病気を治すために遺体を食べたなら、怪しい情報に惑わされたということ」と語り、こう続けた。「今だって真偽不明の情報でうがい薬が品薄になった。人間の心理は昔から変わらないのかもしれない」
天然痘(疱瘡)
天然痘ウイルスによって発症する感染症。痘瘡(とうそう)とも呼ばれる。高熱を発し、全身に水ぶくれができて、治った後もあばたが残る。感染率や死亡率が高く、世界各地で恐れられた。18世紀末に英国の医師エドワード・ジェンナーが世界初のワクチンである種痘を開発。第二次世界大戦後、世界保健機関(WHO)が撲滅運動を展開し、1980年に根絶宣言を出した。人類が唯一、撲滅に成功した感染症。
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August 30, 2020 at 08:30AM
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東北のアマビエたち:人の死体を掘り返して食べる「疱瘡婆」 疫病の恐怖、時代を超えて - 毎日新聞 - 毎日新聞
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