Monday, April 13, 2020

米を食べる機会は増えているのか減っているのか(2020年公開版)(不破雷蔵) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース

日本人が「主食は?」と聞かれれば多くの人が答えるであろう米。だがその米の消費量は減少中で、パンやめん類など多彩な食材に主食需要が分散しつつあると言われている。食生活の多様化の観点ではよい傾向ではあるが、米の生産に携わる人、そして米が好きな人には気になる話に違いない。今回はJC総研が2020年3月に発表した農畜産物の消費行動に関する調査(※)の結果報告書から、米を中心にこの数年間にわたる主食の消費性向の推移を確認する。

次に示すのは主食として1日あたりどの程度の回数、該当する食材を食べているかを答えてもらった平均値。1日3食と提示した上で一週間分・計21食の動向を尋ね、それを単純に7で割って一日あたりの平均値を算出している。平日と休日によって異なる食生活の動向は加味せず、単純な平均値となる。

↑ 1日の主食平均食数(種類別、回)
↑ 1日の主食平均食数(種類別、回)

いくぶんのイレギュラーはあるが、米の食数は漸減し、その分パン類が増えて「いた」。めん類や「その他」はほぼ横ばい、そして「食べない」、つまり欠食事例も増加していたことが分かる。他方、2014年度分以降は米の食数は増加に転じ、パン類・めん類は大きく減り、欠食事例は増加を継続している。主食を摂っている人において、食生活のスタイルに変化が生じた、具体的にはパン類から米にシフトの動きが生じていたようだ。ちなみに「パン類」とは食パンや菓子パン、サンドイッチ以外にハンバーガーなども含まれている。また、内食・中食・外食の別を問わない。

ただし2018年度以降に限ると米は減り、パン類や麺類、「その他」が増える動きを示している。他方、欠食事例は相変わらず増加傾向。米と、パン類・めん類・「その他」との間で、片方が増えればもう片方が減り、片方が減ればもう片方が増えるという連動する動きを、数年単位で繰り返しているようにも見える。

このうち「米が主食」の回答事例の中身を詳しく区分したのが次のグラフ。

↑ 1日の主食平均食数(「米が主食」の内訳、回)
↑ 1日の主食平均食数(「米が主食」の内訳、回)

米が主食の回数が減っていたのは事実だが、その中身としては内食に該当する「炊飯」が主要因だったのが分かる。要は炊飯器などで米を炊いてご飯を調理し、それを食べる機会が減っていた。一方で加工食品(レトルト、冷凍品)や調理済みの米類(弁当、おにぎり)を購入して、自宅で食べる事例はわずかだが逆に増えていた。米食の機会が減ったのは米離れと表現するよりはむしろ、炊飯の手間が原因ではなかったのかと考えられる。

もっとも2014年度以降では直上の通りパン食が減り、米が増えているが、その主要因はやはり炊飯であることも確認できる。外食を減らした、健康やコスト面を考慮し、炊飯にウェイトを置いた結果であることが推測される。さらに2018年度以降の米の減少もまた、中身としては炊飯の減少によるもの。

忌避要因となりうる「炊飯の手間」といえば、食事を作る時間が割けない、面倒、ダイエットのためなどで、食事、特に朝食を抜く事案が増えているとの話がある。今回の調査結果からもそれを裏付ける値が出ている。朝食に限らず、ではあるが「食べなかった」の回答を示した結果、つまり主食を取らない値はほぼ漸増している(主食はとらずに惣菜のみ口にする事例はゼロとはいえないが、あまり想定しにくい)。今件は長期のデータが取得できる主婦・単身女性・単身男性に限りグラフ化している。

↑ 主食平均食数(「食べなかった」、1週間あたり、属性別、回)
↑ 主食平均食数(「食べなかった」、1週間あたり、属性別、回)

1週間あたりの値で、しかも食事のタイミングは不明だが、各属性で欠食(厚生労働省の「国民健康・栄養調査」の基準のように、果物やヨーグルトも欠食扱いするのではなく、純粋に主食を食べないことを意味する)件数は中期的には確実に増加している。その理由までは今調査では尋ねていないが、上記動向や他の調査結果と合わせ、やはり多忙さや調理の面倒くささ、そして健康志向を狙っての傾向であると思わざるを得ない。

ライフスタイルやポリシー、体質などの都合で意図的に食事、恐らくは多分に朝食を抜く人も中にはいるのだろう。しかし単に多忙や面倒くささなどの理由で抜いているのなら、健康を害する可能性はある。1日3食しっかりと食事をとってほしいものだ。

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※農畜産物の消費行動に関する調査

直近年度分は2019年9月6日から11日にかけて、全国の既婚女性・既婚男性・単身女性・単身男性に対してインターネット経由で行われたもので、有効回答数は2108人。男女比はほぼ1対1、年齢階層別構成比は20代以下183人・30代280人・40代346人・50代328人・60代385人・70代以上586人。調査実施機関はインテージ。過去の調査もほぼ同様の条件下で行われている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

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