Saturday, April 18, 2020

口から食べるありがたみ 連載・霹靂の日々【21】大島一樹 - 西日本新聞

 オクサンは無事、胃ろうの手術も終わり、本格的にリハビリに取り組むことになりました。その年の10月初旬、言語聴覚士の指導でのみ込みの訓練も始まり、倒れて以来、初めて口にした食べ物はプリンでした。

 「のみ込みを促すのに二つ方法があり、一つはスプーンの背で舌の根元を押すように刺激。もう一つは顎の下側、くぼんだところを指で押し上げます」-。この指導のおかげで、今も口から食べることができています。指導してくださったこと、本当にありがたかったです。

 口から物を食べる利点は、のみ込む刺激やかみ砕く刺激、また味の刺激を感じられるだけでなく、唾液と食べ物が混ざることでも良い効果があると、後日知りました。少しでも効果があるように、今も毎回ヨーグルトを食べさせています。

 食事の介助は主に私ですが、子どもたちも少し習い、それぞれ何回かはオクサンに食べさせていました。彼らが赤ちゃんだったころと逆になったなぁ、などと眺める私。

 当然義母も食べさせていましたが、その内心を考えると複雑な気持ち。50歳になろうかというわが子に70歳を超えた母が介助するのはやっぱり辛いだろうと思い「私がやります」と声を掛けたこともあります。

 食べさせるのはプリンやヨーグルト、そしてゼリーなど誤嚥(ごえん)のリスクが低いもの。普通に食事できるありがたさにも気づきました。

 (音楽プロデューサー、佐賀県みやき町)

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