「賞味期限切れても食べられる?」の検索が増えているようだ。外出自粛の巣ごもり消費で、家に保管しておいたものを食べようとしているからだろうか。筆者が2年前の2018年5月に書いた卵の記事や、昨年2019年7月に書いた水の記事などにアクセスが集まっている。
たとえば、Yahoo!で「賞味期限切れ」と入れてみると、出てくるのは卵を筆頭に、ヨーグルトや豆腐、牛乳、納豆など、タンパク質が多く含まれているものが多い。
そこで、検索されている主な食品について、おおよそいつまで食べられるかを伝えていきたい。
ちなみに「賞味期限」とは、食べられる保証期間ではない。品質が切れる日付でもない。「美味しさの目安」である。英語で言うと「Best before (date)」。しかも日本では、美味しく食べられる期限に、さらに1未満の「安全係数」を掛け算して、2割以上、短く設定している企業がほとんどだ。国は、安全係数として「0.8以上1未満」を推奨しているが、0.8より小さい数字を使っている企業や分析センターも多い。ということは、10ヶ月の賞味期限だったものが、リスクを考慮して、8ヶ月、あるいはそれより短く設定されているということだ。消費者庁は「賞味期限ですぐ捨てることなく、五感を使って消費者自身が判断すること」を勧めている。
Q、賞味期限切れ食品を販売することは問題ないのですか?
A、テレビ局の取材でよく聞かれますが、法律的に問題ありません。
Q、賞味期限が切れた卵は食べられますか?
A. 賞味期限が過ぎた日数にもよりますが、加熱調理することで十分食べることができます。なぜなら、市販の卵パックに表示されている賞味期限は「夏に生で食べられる期間」だからです。下のグラフで青で示したのが「生で食べられる日数」です。
卵は、保存温度が25度なら、産卵から21日間(3週間)、保存温度が10度以下なら57日間(約2ヶ月間)、生で食べることができます。でも、消費者向けに売られている卵の多くは、パックしてから「2週間」で冬も夏も統一しています。
卵で心配されるサルモネラ菌は、10度以下で増殖のスピードが遅くなります。買ってきた卵は揺らさないほうがいいので、何度も開け閉めする冷蔵庫のドアではなく、奥に入れましょう。
「ゆで卵にして取っておく」という人がいますが、ゆでてしまうと、生卵より日持ちしなくなってしまいます。生卵には、溶菌作用のあるリゾチームという酵素が含まれていますが、ゆでるとこの酵素の働きが失われてしまうためです。
Q、牛乳は賞味期限が切れてからどのくらいまで飲めますか?
A、牛乳は、低温で殺菌したものと、高温で殺菌したものがあります。低温殺菌牛乳は日持ちがしないので「消費期限」表示がされています。消費期限表示の食品は、おおむね5日以内の日持ちのものに表示されます。劣化のスピードが早いので、その日付までに飲み切りましょう。
高温で殺菌した牛乳は「賞味期限」表示がされていますが、これもあくまで「未開封」の状態での賞味期限ですので、開けたあとはできるだけ早めに飲み切りましょう。あまり牛乳を消費しない方や、一人暮らしで消費量が少ない場合は、1リットルではなく、500ミリリットルのものや、常温で2ヶ月保存できるロングライフ牛乳(LL牛乳)の小さいサイズを買ってみてはいかがでしょうか。
デンマークのある乳業メーカーは、1リットルパックの牛乳の側面を使って「賞味期限が目安である」と書いており、イラストを使って「目で見て、鼻でにおいを嗅いで、味をちょっと見て判断するように」と、賞味期限の日付だけ見て判断しないよう、消費者に向けて啓発しています。
4月から5月にかけては、一年の中でも生乳の生産量が多くなる時です。一方、新型コロナの影響で学校給食が休止したため、消費量が少なくなってしまうことが懸念されており、農林水産省が、一般消費者に消費を呼びかけています。飲むだけでなく、調理で使ってみると、割とたくさん消費できます。
Q、ヨーグルトはどうでしょう?
A、食品の保存に詳しい、東京農業大学名誉教授の徳江千代子先生が監修した『賞味期限がわかる本』(宝島社)には、「開封後に食べられる期間」について乳業メーカーに質問した期間が掲載されていて、「開封してから2~3日」となっています。
10度以下で保存して、およそ2週間が賞味期限とされる場合が多いです。
発酵が進むと酸味が増すので、味を確認してから食べましょう。
Q、豆腐はどうでしょうか。
A、豆腐は早めに食べきるのがいいです。パックされている豆腐は、買ってきたら密閉容器に移し替え、水を毎日換えていきながら表示の日付までに食べきることをお勧めします。
Q、納豆は発酵食品だから大丈夫ですよね。
A、『賞味期限がわかる本』(宝島社)では、全国納豆協同組合連合会が「未開封の納豆を食べられる日数は購入後2週間」と答えています。納豆メーカーの方によれば、「本当は、賞味期限が切れる頃が一番美味しいのだが、おもてだってそういうことは言えない」とのことでした。
保管しておくと、白くなってくることがありますが、これはチロシンというアミノ酸の結晶です。体に害を及ぼすものではありません。
Q、缶詰はどうでしょう?
A、缶詰は、真空状態で密閉されているので、理論上は、半永久的に持ちます。缶自体の品質保持期限が3年間のため、どの缶詰も、賞味期限は缶の保持期限に合わせて3年間に設定されています。ただ、これまでの実験で、製造してから10年以上が経過した缶詰でも、開封しても菌が検出されなかった場合も確認されています(東京農業大学名誉教授、徳江千代子先生の実験による)。
ツナ缶の製造工場に勤める社員の方によれば「賞味期限が切れる頃が美味しい」とのことです。缶詰は味がしみるまでに半年以上かかるので、作り立てより、作ってからしばらく経ってからの方が美味しいそうです。
Q、備蓄していたペットボトルの水の賞味期限が切れていたのですが、これは捨てたほうがよいですか?
A、ペットボトルの飲料水に表示されている期限は、表示してある容量が担保できる期限です。長期間保存していくと、ペットボトルを通して水が蒸発し、表示内容量を欠けてしまうと「計量法」違反となるため販売できません。ただ、ろ過・加熱殺菌されており、賞味期限を過ぎても飲用可能であることがほとんどです。すぐに捨てなくて構いません。
イギリスでは賞味期限過ぎても使えるガイドラインを発行
イギリスでは、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大を受けて、フードバンクや福祉利用などで再分配する際、賞味期限を過ぎていても使える期間を書いたガイドラインを発行した。発行したのはイギリス政府が2000年に設立した組織、WRAP(ラップ)だ。
食品に輸出規制がかかる昨今、食料自給率37%の日本もこのくらいの度量が必要だと思うが、ゼロリスクを求め、責任を回避する人たちが多いので、まず難しいだろう。
日本では、東京都民が一年間食べる量に相当する612万トンの食品ロスを捨てている。
最新の食品ロス推計値である平成29年度(2017年度)のデータは、4月14日、農林水産省と環境省から発表された。
前年度の平成28年度(2016年度)には、家庭と事業者の割合は45:55だった。それが最新の値では46:54と、事業者が減った分、家庭からのロスの割合が少し増える結果となった。
「あるのにまた買う」から冷蔵庫がパンパンに
前年度、平成28年度のデータを消費者庁の資料から見てみると、最も多いのが食べ残しで38.5%。次が過剰除去(食べられる部分まで除去してしまう)で30.9%、3番目が直接廃棄(期限接近などで直接ごみ箱に捨てる)で30.6%となっている。
流れとしては、「あるのにまた買う」ので冷蔵庫がパンパンになる→賞味期限が迫る、切れる→「賞味期限切れ、食べられるのか?」と検索する→心配で捨てる→食品ロスが増える・・・。
基本的には「自分で判断」して消費すること
最近は、ネットでクリックすればすぐ答えが出る時代だからか、人に聞けばすぐ答えが出ると思って聞いてくる人もいる。食品メーカーのお客様相談室にも、「うちにあるこれ、食べられますか」と聞いてくる人がいる。製造工場から出荷するまではわかるが、そこから先は全国津々浦々、どういう状態で店で売られ、どういう状態で買って保管されていたかは百人百通りなので、正確に「何月何日まで食べられます」というのはほぼ不可能だ。
スウェーデンでは、賞味期限が目安でしかないことを、食品のパッケージに入れ始めている。
気を付けるべきは5日以内の日持ちにつけられる「消費期限」。保存状態によって賞味期間も変わってくるため、前述の情報もあくまで参考としていただき、基本は、目で見て、鼻でにおいを嗅いで、味を見て判断して欲しい。このことは、中学校の家庭科の教科書に明記してある(どの教科書会社のものにも)。
参考情報
"食べる" - Google ニュース
May 04, 2020 at 04:28PM
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賞味期限切れの卵は食べられる?牛乳・ヨーグルト・納豆・豆腐・缶詰は?(井出留美) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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