「もぐもぐタイム」というものが、最近の小学校の給食の時間に増えているというニュースに接しました。
もともとは、2018年の平昌五輪の時のカーリング女子チームが、ハーフタイムに食事を取る時間を、こう呼びました。なんだか、可愛い表現でした。
でも、学校給食では、「給食の時間、黙って食べましょう」という時間を「もぐもぐタイム」と呼んでいます。
「黙って」というのは、文字通り、一言もしゃべらずに、ということです。ここらへん、日本人は几帳面ですから、一度、決めたら誰もしゃべりません。
全員がシーンとした中で、黙々と食事をしていました。正直に言って、咀嚼音と食器の触れ合う音だけが響く教室の風景は不気味でした。
これが大人なら、禅寺の禅僧みたいとも思うのですが、子供達の沈黙の風景は強烈な違和感でした。
誰かが、ちょっと話そうとすると、先生が「○○君。もぐもぐタイムですよ」と注意していました。
で、取り入れている学校は、「残食率が減った」と胸を張っています。
食べ残しが減ったので、とてもいいと自慢しているのです。
「しゃべりに夢中になって、食べきれない子供もいなくなった」「落ち着いて食べるようになった」という効果を自慢します。
話してはいけないので、食べるしかなくなり、結果として食べ残しの量が減るのです。当たり前と言えば、当たり前なのです。
で、それを受けて、「生徒の咀嚼力が上がり、集中して食べて、消化もよくなる」ということで、今、猛烈な勢いで全国の小学校に広がっているのです。
「ちゃんと食べられるから、もぐもぐタイムはいいと思います」と優等生は真面目に答えます。
「ちょっと、淋しい」「友達と話しながら食べたい」と正直に語る「不真面目な」生徒もいました。
◆給食の目的は残食率を減らすこと?
千代田区立麹町中学校の校長先生、工藤勇一さんの著書「学校の『当たり前』をやめた。―生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革」(時事通信社)という素敵な本があります。
この本の中で、工藤さんは、教育とは、「より上位の目的は何か?」を常に問いかけることだと書いています。
例えば、下校中に買い食いをしてはいけないと厳しく指導する時、「より上位の目的は何か?」と問いかけるのです。
教育とは、子供を抑えつけ、どんなにノドが乾いても、飲物を買うことを禁じることではないだろうということです。
給食の目的はなんでしょうか? 食べ残しを減らすことでしょうか。
「残食率を減らすこと」と「楽しく食事をすること」「クラスメイトと食事しながらコミュニケイションすること」は、どちらが「上位の目的」なのでしょうか。
僕は、どう考えても、「残食率」よりは、「食事をしながらコミュニケイションすること」がより上位の目的だと思うのです。
実際に、ニュースでは、「もぐもぐタイム」を取り入れていない学校の先生が「午前中にケンカした児童が、給食を食べながら仲直りすることもありますから」と話していました。
また、「しゃべりに夢中になったら食べきれなくなる。だから、うまく調節しよう」ということを学ぶのも教育だと思うのです。
この連載で、「夏、水筒を持っていても、先生が飲めと許可しないとどんなにノドが乾いていても飲まない小学生」のことを書きました。
この指導を真面目に守った結果が、「電車の運転手が勝手に水を飲んでいた」とか「消防士がコンビニでコーヒーを飲んでいた」と非難する人間を生んでいるんじゃないかと僕は心配します。
「もぐもぐタイム」を小学校1年生から真面目に守り、そのまま6年間育った人間がやがて、「ファミレスで隣のグループはしゃべりながら食べてる。信じられない。うるさい」というクレームをいれる時代が来るんじゃないかと、怯えているのです。
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February 22, 2020 at 02:09PM
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