いくら働いても食べるだけで精一杯。イギリスの看護師が待遇改善を求めて行おうとしていることとは――(写真:yaroslav astakhov/PIXTA)
同僚の看護師ジョディーが、「中古住宅の購入予定を一旦中止した」とがっかりした顔でつぶやいていた。
9月下旬、イギリスの住宅ローンは2年固定金利、5年固定金利ともに6%超えを記録した。一般的な日本の住宅とは反対に、イギリスでは持ち家は年数とともに価値が上がる資産になるため、持ち家率は非常に高い。しかし、このような金利では無理。ジョディーのようにイギリスで持ち家を買うことは、庶民には簡単なことではなくなった。
ガソリン代は1リットル300円
イギリスの物価高騰はひどい。今年8月のインフレ率は、前年比で9.9%の上昇を記録。同じく前年比で3.3%上昇した日本と比べると3倍になる。多くの食品を輸入に頼るうえ、ポンドが大暴落したこともあって、食品や日常品の物価はますます上がっている。
春から続くガソリン代の値上がりは、夏には1リットル300円を超えた。これを受けて公共交通機関の運賃も上がった。従業員に手当として交通費を支給するという仕組みがないイギリスでは、通勤自体が大きな負担となった。もちろんこれはNHS(国民保健サービス)の看護師も同じだ。
こうした 経済混乱の中で早くも厳しい立場に置かれているトラス新イギリス首相だが、ここでまた1つ新たな問題を突きつけられている。史上初のイギリス全国規模の看護師のストライキの賛否の投票が始まったのだ。
投票するのは看護師で、賛成が反対を上回れば全国規模でストライキに突入する。イギリスでは夏に同規模の鉄道ストライキがあり、多くの国民に影響を与えたばかり。看護師のストライキともなれば、その影響は計り知れないだろう。
イギリスの公共部門に従事する労働者の場合、法律によって事前に組合側が労働者にストライキの賛否を投票で問うことが義務付けられている。そのため、10月6日から11月2日までの間に組合側から看護師の各家庭に投票用紙が郵送され、看護師は賛否を記入したうえで送り返す。投票は郵送のみと法律で決められている。
ところで、一介の看護師である私がなぜイギリスの政権問題に言及しているのか不思議に思われる人もいるだろう。
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