Tuesday, July 14, 2020

熱々を手づかみで食べるジョージアの水ギョーザ、ヒンカリ - 朝日新聞社

ジョージアの土産物屋に行くと、必ずと言っていいほどあるものがある。肉まんのようなものをかたどったマグネットだ。街の観光名所や、ワイン醸造発祥の地にちなんだデザインのものと肩を並べ、堂々と鎮座するこのマグネットの正体は、「ヒンカリ」というジョージアの水ギョーザをかたどったものである。

熱々を手づかみで食べるジョージアの水ギョーザ、ヒンカリ

土産物屋の店先には、ヒンカリのマグネットがたくさん売られている

■連載「おうちで作る旅先の味」は、ライターの太田瑞穂さんが、旅の思い出をつづりつつ、心に残ったご当地料理を、現地の人に教わったレシピで作って紹介します。

欧州、中東、アジアの結節点

熱々を手づかみで食べるジョージアの水ギョーザ、ヒンカリ

4世紀に作られたとされるナリカラ要塞(ようさい)から見たジョージアの首都トビリシ

東欧の国ジョージアは、知る人ぞ知る「美食の国」だ。「今度ジョージアに行くよ」と言うと、ヨーロッパに住む友人たちからは必ずと言っていいほど「うらやましい! おいしいものをたくさん食べて来てね」と返ってくる。日本でも最近、松屋が「シュクメルリ」というジョージアの鶏肉料理を提供して話題となるなど、徐々に知名度を上げつつあるのではないだろうか。そんなジョージアを代表する料理のひとつが、このヒンカリだ。

すぐ北にロシア、南にトルコとアルメニア(その先はイラン)、東をアゼルバイジャンに囲まれたジョージアは、まさにヨーロッパ、中東、アジアの交差点だ。水ギョーザのようなヒンカリの成り立ちも、こうした地理的な背景が無関係ではないだろう。

熱々を手づかみで食べるジョージアの水ギョーザ、ヒンカリ

可愛らしい家が並ぶトビリシの旧市街地

小籠包(ショーロンポー)を少し武骨にしたような巾着型のヒンカリは、ニンニク1房ほどの大きさで、食べ応えがある。五つも食べればおなかがいっぱいになってしまうが、あっさりとした味わいで後を引く。中身は場所によって多少違いがあるが、スタンダードなひき肉に加え、じゃがいも、キノコなど野菜だけのものもあった。

熱々を手づかみで食べるジョージアの水ギョーザ、ヒンカリ

トビリシのレストランで食べたヒンカリ。最低三つ、もしくは五つから注文をとるところが多い。写真左は、こちらもジョージア名物、ホウレンソウのプハリと、ローストしたナスやパプリカにくるみのペーストを詰めたもの。白のジョージアワインと一緒に

レストランや食堂で注文すると、もくもくと湯気を上げた、ゆでたてが運ばれてくる。そして、テーブルに置かれたそばから、皆一様にてっぺんの取手のような部分をつかみ、皮を少しだけかじり取って、やけどをしないように中の肉汁をすする。小籠包と同様に、この肉汁こそがヒンカリのハイライトである。肉汁を吸い上げてから、ようやく残りに取り掛かるのだ。

熱々を手づかみで食べるジョージアの水ギョーザ、ヒンカリ

緑豊かなトビリシの街角で、のんびりと過ごす人々

「取手の部分は食べずに残して、あとで幾つ食べたか数えるんだ。小さい頃は、食べた数を兄弟で競い合ったよ」と現地で出会った男性は教えてくれた。

熱々を手づかみで食べるジョージアの水ギョーザ、ヒンカリ

カメラを持って歩いていたら、向こう側から歩いて来た男性が「やあ!」とポーズを取ってくれた

ある日、たまたま入った食堂では、地元の男性が3人、大きなビールジョッキを傍らに、大皿に山盛りに運ばれて来たヒンカリを仲良く食べていた。ひとつ、またひとつと口に運びながら、ほとばしる肉汁をビールで流し込む。おしゃれなレストランより、肩ひじ張らない食堂でワイワイと食べるのが似合う料理だ。

熱々を手づかみで食べるジョージアの水ギョーザ、ヒンカリ

トビリシ旧市街地はレストランやバーでひしめき、地元の料理やワインに舌鼓を打つ人々でにぎわっている

ジョージアを訪れたのは、2019年の夏。首都トビリシでは、日が沈んで涼しい風が抜ける中、あちこちでレストランやバーに明かりがともり、地元の人たちがバルコニーや通りに椅子を出してのんびりと夕涼みをしていた。美食の国だけあって、街中にレストランやバーがひしめく。観光客が集まる旧市街地では、音楽の演奏や食器を運ぶ音、笑い声が絶えず、歩きまわるだけで胸が躍った。

イラクリさんの母のレシピは

ヒンカリの作り方は、トビリシ在住のイラクリさんに、お母さんのレシピを教えてもらった。イラクリさんと奥さまのナティアさんとは、黒海沿いの街、バトゥミのワインバーでたまたま隣り合わせになり、今でも仲良くさせていただいている。ナティアさんいわく、「ジョージアの料理は、色々な文化の影響を受けているけど、ザクロを使ったりもするし、ペルシャ料理の影響が強いんじゃないでしょうか」。ジョージアワイン片手に様々な話に花が咲く、素敵な出会いだった。

熱々を手づかみで食べるジョージアの水ギョーザ、ヒンカリ

ヒンカリの材料

<ヒンカリ(12個分)>
―生地―
強力粉 75g
薄力粉 75g
卵 1/2個
塩 小さじ1/4
水 50ml

【作り方】
全てをまぜ合わせて2〜3分こね、まとめてラップで包むかタッパーに入れて冷蔵庫で15分ほど寝かせる。

―中身―
合びき肉 200g
玉ねぎ(みじん切り) 1/2個分
塩 小さじ1/3
コショウ 少々
冷水 70ml
(イラクリさんのレシピには入っていなかったが、好みで以下を混ぜてもおいしい)
青唐辛子(みじん切り) 1本
パクチー(みじん切り) 大さじ3
赤唐辛子(粉末) 小さじ1/4

【作り方】
ひき肉、玉ねぎ、塩、コショウ(お好みの素材を入れる場合はそれらも)をよくまぜ合わせ、少しずつ水を入れてまぜ、全体をまとめる。

熱々を手づかみで食べるジョージアの水ギョーザ、ヒンカリ

包むときの注意点は、破れや開きがないようにすることと、てっぺんをねじって取っ手を作ること

【包んでゆでる】
1. 皮と中身を12等分する。
2. 打ち粉をした台の上で皮を丸く伸ばし、中身を真ん中にのせる。ふちに水を少しつけ、てっぺんをねじって閉じる。ヒンカリのだいご味は肉汁にあるので、破れたり開いたりしている部分がないように気をつける。
3. 大きな鍋にお湯を沸かし、塩小さじ1を入れ、ヒンカリをゆでる。時々かきまぜてくっつかないように気をつける。ヒンカリが浮いてきたら出来上がり。

熱々を手づかみで食べるジョージアの水ギョーザ、ヒンカリ

たっぷりのお湯でゆでる

ゆでたてをどうぞ! てっぺんのつまみを持って、一口かじり、肉汁をすすってから食べる。熱いのでやけどに注意!

熱々を手づかみで食べるジョージアの水ギョーザ、ヒンカリ

付け合わせはジョージアでよく食べた、くるみのドレッシングのサラダ。ワインビネガー大さじ2、オリーブオイル大さじ1、くるみ大さじ4、砂糖小さじ1/2、塩コショウをミキサーにかけてドレッシングをつくり、一口大に切ったトマト、きゅうり、紫玉ネギ、ミントとあえる

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PROFILE

太田瑞穂

ライター、翻訳&通訳。旅先でその土地の日常的な暮らしやそこに根付く文化を少しだけ体験するのが好き。

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