Friday, July 8, 2022

食べることは生きること くいだおれの街で聞いた「わたしの争点」 [参院選2022] - 朝日新聞デジタル

makanresto.blogspot.com

 食べることは、生きること。くいだおれの街・大阪で、いまの政治への思いを、食べて、聞いてみた。

まずは映えるカステラパフェを

 カステラがのったパフェ。アイスクリームに、イチゴ味のあめ細工。パリパリした食感と甘さがしみたカステラがなんともおいしい。

 創業70年あまりの大阪・心斎橋の老舗「カステラ銀装」に今春登場した「カステラパフェ」(税込み1320円)だ。考えたのは常務取締役の赤木康人さん(42)。

 カステラは、老人会町内会の会合などで年配の人に重宝されてきたが、コロナ禍で会合は全て中止に。外出を控える高齢者も多く、客は数えるほどになった。

 打開のため、若者向けにSNS映えも意識して「カステラパフェ」を考えた。客足は徐々に戻り、パフェを撮影して楽しむ人の姿も見られる。

 苦しんだこの2年、政治への思いも変わった。

 「コロナ禍は誰もが当事者になる出来事で、今までの経験が通用しない難しい決断を迫られる。その状況は政治家も同じで、だからこそ苦労がわかるようになり、政治が自分事として見られるようになった」

 参院選では、政治家の発信した情報を自分なりに調べて考え、興味をもって政治に加わることを大事にしたいと思う。

 スパイスの豊かな風味にパクチーの香り。羊のひき肉とほろほろのチキンをほおばれば、もう手が止まらない。

 大阪市の梅田と心斎橋に2店舗を構える「渡邊咖喱(カリー)」。チキンカレーと羊のキーマカレーをあいがけした「元祖渡邊カリー」(税込み1300円)は、16年の開店時からのメニューだ。店を経営する「クミンスタイル」の渡邊理(おさむ)さん(51)が掲げるのは「毎日食べられるカレー」。提供するカレーは7種類。トッピングも多く、飽きが来ない。だが、毎日食べてもらいたいからこそ、物価高騰が悩ましい。

 キーマは1キロ1300円の羊のもも肉だったが、今年に入って仕入れが止まり、2千円ほどの腰肉に変えた。鶏肉は国産に。外国産食材が軒並み高騰し、国産との差がなくなった。

 4月、苦渋の決断を下す。カレーメニューを一律50円、値上げして、1千円未満のメニューが消えた。

 梅田本店はオフィス街のど真ん中。テレワークの広がりも向かい風に感じる。

 参院選を控え、飲食業界への支援が気になる。「コロナが終息した後も、長い期間を考えた助けがいる。財布のひもを緩めてお金を配ることも考えて」と訴える。

甘さ控えめフレンチトースト

 切り分けたフレンチトースト(税込み850円)を口に運ぶと、トロッとした甘そうな食感だが、甘くはない。

 「アイスなどと一緒に食べても、ハンバーグなどと一緒に食べても、どちらでも合うように甘さはひかえました」とオーナーの吉本義基さん(42)。

 11年に大阪府泉大津市居酒屋を開き、経営は軌道に乗ったが、コロナ禍が襲った。高齢者宅を訪問する宅配弁当を始めたが、お年寄りが出歩かなくなり、健康を損なっていないかと心配になった。よく自転車で出かける姿を見かけた女性が、気がついたら寝たきりになっていた。

 「地域の人たちに恩返しがしたい」。そんな思いから、昨年9月、高齢者が集まり、そして働ける喫茶店として、「ひので珈琲(コーヒー)」を開いた。客がひっきりなしに訪れる。現在は10人が働き、平均年齢は69歳。みな「もっとシフトに入りたい」と言ってくれるという。

 政治に感じるのは、「シニアに対する施策の順序が逆」ということ。医療費を抑えるため、窓口で払う高齢者の自己負担を増やすといった制度を、次々とつくってはいないか。

 そんなことより先に高齢者が元気に働ける場をつくるべきだ、と思う。「やりがいをもって働ける場があれば、医療にかからない元気なシニア層が増えるはず。そうすれば結果として、医療費は抑えられる」

ピザとビールで最高

 アサリやイカ、エビがたっぷりのった少し厚めの生地に、とろっとしたチーズがかかるシーフードピザ。ビールを一緒に飲めば至福の時間だ。

 店のオーナーは吉澤里絵子さん(37)。大阪市阿倍野区でゲストハウスとバーを併設した「Mad Cat Hostel Osaka&Bar」を営む。

 20代前半から世界各地を旅してきた。そこでゲストハウスに出会う。旅するごとに友人が増える感じが楽しく、いつか日本でもやりたいと思った。19年8月にオープン。近所の人が外国人観光客とバーでお酒を飲むことも多く、交流の輪が広がったことがうれしかった。

 20年、コロナ禍に襲われた。予約はすべてキャンセル。併設のバーに近所の人が来てくれたが、翌年、さらに苦しくなった。酒類の提供が禁止されたからだ。絞り出したのが、コワーキングスペースとしても使える期間限定の「無言カフェ」。注文以外の会話を禁止し、ピザランチを提供した。店を続けようと必死だった。

 政治に求めるのは、観光業などの支援充実。「政府は、海外の観光客がもたらす経済効果などプラスの面もしっかり発信して欲しい」。参院選では、次のステップをイメージできる人に投票したいと思う。

濃厚な甘さの大学芋

 口に入れると、外はあめのカリッとした食感。中の芋はしっとり。落差を楽しめるだけでなく、濃厚な甘さは、お茶うけにぴったりだ。

 「おいしさの秘密は安納芋です。でも、水分量が多いので、作るのは難しいんです」

 堺市南区で大学芋専門店「芋田屋又三郎」を営む松田博幸さん(57)と松永香織さん(50)夫妻。20年2月に店舗を持たない大学芋専門店をオープン。イベントでのテント販売がメインのつもりだったが、コロナ感染が急拡大してイベントがなくなり、自宅隣の家を借りて店を構えることにした。

 なぜ、繁華街に店を構えなかったのか。

 それは、知的障害を伴う自閉症と診断された長女(12)の居場所をつくるのが最終目標だからだ。博幸さんは「『自分が死んだ後、この子はどうなるんやろう』と考えるんです」と、打ち明けてくれた。

 地域に愛される店に育て、障害のある人に適正な価格で賃金を支払う仕組みをつくれないか。それが長女の居場所になればと考えた。香織さんは「障害者とか健常者とか分け隔てせず、みんながごちゃ混ぜになって生きていける世の中になれば」と願う。

 博幸さんは、現在の補助金に頼った福祉施策のあり方に限界を感じている。

 「障害者が働ける居場所づくりを考えている人は全国に多いはず。そうした知恵を集め、政策に落とし込むことを政治には考えてほしい」

酒に合うラフテー

 東大阪市の居酒屋「オナガ家(や)」。ゴーヤチャンプルー、ソーキそばなど、沖縄の庶民の味が楽しめる。沖縄出身の店主、翁長晴永(せいえい)さん(69)に、これはという一品をお願いした。

 ラフテー。

 豚のバラ肉を1時間半ほどゆでて1日寝かせて角切りし、しょうゆと砂糖、そして泡盛を混ぜた中へ。弱火でトロトロと1時間半。やわらかく、酒にあう。

 21歳のころ、本土に出ようと考えた。大阪の町工場などで働いた。調理専門学校に通い、21年前、居酒屋を開いた。

 参院選でいちばん大切なキーワードは「平和」だ。

 沖縄の日本復帰の数年前、翁長さんが中学生だったころ。街中が何度も断水になった。ところが、米軍将校の豪邸は広い芝生の庭に水がまかれていた。心に「不平等」の3文字が刻まれた。

 米軍基地の関係者の振る舞いに、沖縄人は泣かされてきた。基地をめぐる政府の二転三転する方針に、失望してきた。「政治家たちは防衛費増強と言っています。それで本当に平和になるんでしょうか。流れに身をまかせず私なりに考え抜きたい」

断面が命のフルーツサンド

 イチゴを丸ごと切った色鮮やかな断面にまず視線を奪われる。どこから食べようか、食べてしまってもいいものか、迷うほどのボリューム感。

 泉佐野市の建設会社敷地内にあるフルーツサンド専門店「まほろ屋」。昨年4月、事務員の石井智江さん(53)がオープンした。

 断面を大胆に見せる分厚いサンドはSNSで評判に。遠方からも「ぜひ送って」と注文は入った。生クリームと果実を使ったサンドは日持ちが効かず、発送には向かない。瞬間冷凍できる、特殊な冷凍庫を買おう――。

 その発想が新たな商品を生んだ。試行錯誤し、泡立て直後の生クリームの風味を保ったアイスフルーツサンドを開発。必要な資金は750万円。市のふるさと納税で、返礼品を加工・製造する事業者を支援するクラウドファンディング型の制度があった。秋にエントリーすると、寄付総額は2千万円を超えた。冷凍庫のおかげで発送できるようになった。

 石井さんは、子どもとシェルターで過ごした時期がある。パートや非正規の収入では、やりたいことをさせられなかった。それだけに、小さな子がいるお母さんや、自立を望む女性が笑って働ける環境を作るのが、末娘の名を冠した「まほろ屋」の目標でもある。

 今、国がコロナ対策に充てる費用は将来、子どもたちの世代が負う。「社会の持続可能性をどう見ているかや、公平な教育施策に注目しています」

 参院選は10日、投票日を迎える。

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