JR信越本線横川駅といえば、今も昔も荻野屋の「峠の釜めし」が有名だ。旅情の極みともいうべき国民的人気商品である。
昭和50年頃、信越本線に乗って高崎駅を出発すると、車内は落ち着かない雰囲気に包まれる。そして電車が横川駅に到着すると、乗客がこぞって「峠の釜めし」を買いに売り子さんに殺到する。窓を開けて注文する人も多数。機関車を連結している間に我も我もと買いに走る。
そして、横川駅を出発すると、何事もなかったように、碓氷峠を眺めながら、あの茶色の独特の器に入った釜めしを悠然といただくわけである。あんずを先に食べる派と後に食べる派がいて、議論になったりするのも楽しい旅の記憶だ。ちなみに自分は後に食べる派。
余談だが、軽井沢駅につくと今度は駅そばを販売しに来る。太めのぼそっとした茹で麺に、紫色のきれいなアツアツのつゆがかかって登場する。結局、釜めしとかけそばを続けて食べるという大変贅沢な峠越えを味わえた。
昭和32年に誕生、日本の駅弁へ
「峠の釜めし」を荻野屋4代目の高見沢みねじ社長が創案したのは、昭和32(1957)年のこと。その後の人気は目を見張る勢いとなり、昭和・平成の時代を駆け抜けた大人気駅弁となっていった。
そんな旅情溢れる「峠の釜めし」に転機が訪れる。平成9(1997)年10月1日に北陸新幹線が開通した。それに伴い、信越本線横川・軽井沢間が廃止され、横川駅が群馬県側の終着駅(発着駅)となった。荻野屋は横川駅での大きな販売機会を失うことになったのだ。「峠の釜めしはどうなるのか? お願いだからなくならないで欲しい」と大勢のファンが気を揉んだ。
そんな願いが通じたのか、幸運にも、新幹線の高崎・軽井沢間で「峠の釜めし」を車内販売することが決まり、また、東京駅の駅弁コーナーでも販売されるようになった。「峠の釜めし」は横川の駅弁から日本の駅弁へと大きくシフトしていったわけである。
からの記事と詳細 ( “国民的駅弁”と自家製そばが合体すると…神田で食べる「峠の釜そば」(1100円)は懐かしい味だった! - 文春オンライン )
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