Thursday, June 16, 2022

冷凍食品を「家で食べる」とは限らない…セブンの大ヒット商品「カップ入り冷凍チャーハン」誕生秘話 - SankeiBiz

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ヒット商品を生み出すコツとはなにか。セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の鈴木敏文さんは「すでに顕在化したニーズを満たすのではなく、潜在的なニーズを発掘することが重要だ。つまりデータの奥にある買い手の心理を読み解く必要がある」という――。

撮影=プレジデントオンライン編集部
撮影=プレジデントオンライン編集部

※本稿は、鈴木敏文『鈴木敏文のCX入門』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

最初の「満足」はやがて「飽きる」に変わる

IoT(モノのインターネット)などで集積したビッグデータをAIなどで解析し、特定のパターンを見出して解を導く。このビッグデータ解析は、企業の種々の業務・活動の合理化、コストダウン、リスク低減などについては有効でしょう。

しかし、消費者の購買動向や購買行動についていえば、疑問を感じざるをえません。

注意すべきは、これまでに集積されたビッグデータは、あくまでも過去のデータであるということです。それをAIで解析し、消費のパターンを導き出しても、すでに顕在化しているニーズに追随することはできても、これまでにない潜在的ニーズを発掘することはできません。

お客様が求める満足度のレベルは常に増幅します。顕在化しているニーズに対応した商品やサービスを提供しても、最初の「満足」が、次は「ただの合格点」になり、やがて「飽きる」に変わります。

お客様は常に新しい価値を求め、より大きな満足を求める。それに応えるには、仮説を立てて、潜在的ニーズを掘り起こすことです。

そのとき、販売データの個々の商品の売れ行きの動きから、問題意識をもって、新しい兆しはないかと探ってみると、新しい売れ筋や潜在的ニーズを察知して、先行情報として活かし、仮説を立てることもできます。

ポイントは、データの向こうにお客様の心理を読み、意味を見出せるかどうかです。

冷凍チャーハンが学校近くの店舗で売れていた

セブン‐イレブンでの例を2つ紹介しましょう。

1つ目は、2018年11月に発売され、ヒット商品となったカップ入りの冷凍チャーハン「カップごはん」シリーズの開発の経緯です。

この新商品開発も、商品開発本部の担当者が、販売中の商品である一人前の袋入りチャーハンのPOS(販売時点情報管理)データを読んでいて、不思議な数字を見つけたことがきっかけでした。

学校の近くにある店舗に限って、その商品が売り上げ上位に入っていたのです。

このデータは何を意味するのか。不思議な数字の理由を知るため、担当者が現場の店舗に出かけてみると、そこには下校途中の学生たちが袋入りの冷凍チャーハンを店頭のレンジで温め、スプーンで食べている光景がありました。

「冷凍食品=家で食べる」常識を覆したカップの開発

学生に聞くと、「おにぎり2個より安くてコストパフォーマンスがいい」「熱々のが食べられる」とのことでした。

学生たちは、袋入りチャーハンに、売り手が想像もしていなかった体験価値を見出していたのです。

そこで、担当者は、「カップ入りの冷凍チャーハンを開発すれば、チャーハンを自宅以外で食べるという潜在的ニーズを掘り起こせるのではないか」と仮説を立て、冷凍食品会社と交渉して発売にこぎ着けました。

その結果、いままで冷凍食品の需要が少なかったオフィス街の店舗でも、ビジネスマンが昼食に購入するという新しい消費スタイルを引き出すことに成功したのです。このヒットが評価され、担当者はビジネス系ウェブサイトが革新的なマーケターを表彰する「マーケター・オブ・ザ・イヤー」に選ばれました。

担当者が売り手の発想で「冷凍食品=家で食べる」という常識や固定観念にとらわれたままであったら、データを見ても“異変”に気づかず、新商品開発に挑戦することもなかったでしょう。

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