ヨーロッパを知り尽くした作家・写真家の相原恭子さんが、欧州の気候や風土に育まれ、長く愛されてきた食べ物や飲み物を紹介する連載「欧州おいしい旅」。今回はイタリアの庶民的な焼き菓子カントゥッチです。なんと、ヴィン・サントと呼ばれる甘口ワインに浸して食べるのです。
今回はイタリアのトスカーナ地方で、ワインに浸していただくお菓子の楽しみをご紹介します。それでは、トスカーナの芸術の都・フィレンツェへ旅しましょう!

11月初めの夕暮れ時。大司教座聖堂であるサンタマリア・デル・フィオーレやジョットーの鐘楼(しょうろう)が堂々とそびえるフィレンツェです。
ヨーロッパを風任せに旅していた20代のころ、ここフィレンツェに至り、気がつくと2週間もの時が過ぎていました。時を忘れてしまうほど見所の多い魅力のある都市です。


寒くなってきたので、どこかで温まろうと小さなレストランへ入りました。

さっそくメニューを見せてもらうと、カントゥッチとヴィン・サントが。「やはりあった!」。カントゥッチとはイタリアの伝統的なお菓子で、アーモンドのようなナッツ類やドライフルーツを入れて焼いた硬いビスケットです。ナッツやドライフルーツが入っていないものもあります。
ヴィン・サントは直訳すると「聖なるワイン」という意味。芳醇(ほうじゅん)で甘い味わいが魅力です。なぜスイートワインなのかというと、収穫したブドウを乾燥させて、干しブドウに近い状態にして糖度を上げてから醸造するためです。貴腐菌の作用で糖度を上げる貴腐ワインとは異なる方法です。
本来は、収穫したブドウを麦わらの上に広げて日陰で乾燥させますが、この方法は天候に左右されるため、風通しの良い部屋につるしたり、木製のスノコの上に広げて乾燥させたりします。乾燥させたブドウの糖度は高くなり、できあがったワインはアルコール度が高めの15%前後になります。ブドウの種類は、トレッビアーノ、マルヴァシア、サンジョヴェーゼなどです。デザートワインとして楽しむこともできますが、カントゥッチを浸して食べることで知られています。

硬く焼かれたカントゥッチはヴィン・サントに浸すと、口の中でホロホロと崩れ、ワインの甘みと香りが広がって、絶妙な味わいです。一口、また一口と、友達とおしゃべりしながら食べ続けてしまうおいしさです。
からの記事と詳細 ( ワインに浸して食べるお菓子 カントゥッチとヴィン・サント イタリア・フィレンツェ - 朝日新聞デジタル )
https://ift.tt/3C8B4we
0 Comments:
Post a Comment