東京ドームからの帰り道、頭に浮かんだのは「野球の力」という言葉だった。何というものすごい試合をするのか。筆者は日本シリーズ5戦目まですべて球場で見たが、1試合も凡戦はなかった。先が読めないシーソーゲームが続いた挙句に、球史に残るような第5戦である。野球には多くの人の心を激しく揺さぶる力があるのだ。
昨季の日本シリーズは巨人相手にソフトバンクの4連勝。3戦目あたりからすでに決着がついたムードが流れていたが――なぜ、こんなにすごいシリーズになったのか? 端的に言えばヤクルトもオリックスも「楽をして勝ってこなかった」からだろう。1勝するために知力・体力を尽くすような戦いの果てに、ペナントをつかんだ。そしてCSファイナルステージも楽勝はほとんどないままにそろって2勝1分けで勝ち進んだ。その2チームがエンジン全開のままぶつかったのだ。
全試合「勝利の方程式」を投入しているのに……
このシリーズは様々な見方ができるが、「『勝利の方程式』のつぶし合い」という切り口で見ていきたい。以下、各試合の両軍の投手成績を並べる。
<11月20日/第1戦>
オリックス〇4-3●ヤクルト
・ヤクルト
奥川 7回97球6安1本3三2四1失1責
清水 1回32球1安0本2三1四0失0責H
マクガフ 0回21球3安0本0三1四3失3責●
・オリックス
山本 6回112球5安0本9三2四1失1責
吉田凌 1回15球1安0本2三0四0失0責
ヒギンス 1回33球3安1本2三1四2失2責
比嘉 1回16球0安0本2三0四0失0責○
ともに今年「マダックス(100未満での完封)」を記録した、現時点で一番良い投手を押し立てての初戦。奥川は苦労しながらも7回を97球で投げ切り、代打モヤの本塁打1本に抑えたものの、オリックスのエース山本はヤクルト打線の粘りにあって6回112球、1失点で降板。本来なら完封、最低でも8回まで投げさせたかったが、中嶋監督にとっては誤算だっただろう。
先発が下りた後、ヤクルト、オリックスともに自慢の「勝利の方程式」を繰り出したが、ヤクルト清水は無失点ながらも1安打1与四球、オリックス吉田凌はスライダーが冴えて無失点も、ヒギンスがガチガチに緊張して村上に2ランを打たれる。
その緊張が連鎖したか、ヤクルトのクローザー、マクガフが1死も取れずに逆転負け。短期決戦では「打たれた投手」は以後、使いづらくなる。初戦から「勝利の方程式」が崩れて両軍監督は頭を抱えたはずだ。
<11月21日/第2戦>
オリックス●0-2〇ヤクルト
・ヤクルト
高橋 9回133球5安0本5三2四0失0責○
・オリックス
宮城 7.2回112球5安0本7三1四1失1責●
吉田凌 0.1回4球0安0本1三0四0失0責
バルガス 1回18球1安0本0三1四1失0責
2戦目は高橋、宮城の両左腕先発が快投した。しかし両軍は前日の救援陣の失敗を引きずっている。ヤクルトが高橋を完封させたのは、清水、マクガフで締める「勝利の方程式」が前日に攻略されたからだ。
オリックスは宮城が1失点で降りた後、吉田凌は既定路線だったが、そのあとをCSファイナル3戦目で好投したバルガスとつないだ。
この投手はBC茨城から東京五輪メキシコ代表を経て8月末に入団した。160km/h近い剛速球が売り、ヤクルトには未知の投手だったが、1安打1四球で失点した。中嶋監督は悩みを引きずって東京に転戦することとなった。
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