<SMBC日本シリーズ2021:ヤクルト5-6オリックス>◇第5戦◇25日◇東京ドーム
さあ神戸で逆転日本一だ! 崖っぷちのオリックスが執念の1勝を挙げた。「SMBC日本シリーズ2021」の第5戦で、9回に代打アダム・ジョーンズ外野手(36)が決勝ソロを放った。対戦成績を2勝3敗とし、27日の第6戦はほっともっと神戸で開催。96年日本一の舞台で、ミラクルを起こす。
窮地を救ったのは、大物助っ人だった。ジョーンズが高らかに雄たけびを上げた。同点に追いつかれた直後の9回。代打で左翼席に決勝アーチを描いた。
「今日の試合は本当にギリギリのところだった。あの場面で打つことができてホント良かった。いい当たりだったので、手にまったく感触はなかった」
ベンチ前ハイタッチを繰り返し、喜びを爆発させた。負ければ終戦となる崖っぷちの一戦。逆転日本一に望みをつなぐ大きな1発だった。
試合を決めた一振りは準備が生きた。ジョーンズは試合中、外野手のキャッチボール相手を務める。基本的には6回からグラウンドに登場するが、この日は4回から始動。理由は「ずっとベンチにいるのも退屈だからね」とジョークをさく裂。ガムをかみながら「いい歳だから、体を動かさないと」と表情を崩す。
MLB通算1939安打&282発の実績を誇る大物スラッガーは「目を照明に慣らしているんだ。試合前の打撃練習でもライトはついているけど、全部のライトが光っているわけじゃない。試合では、全部の照明がついている」とキャッチボールの意図を明かす。独自のルーティンが必然のアーチを生んだ。
シーズン終盤には親族の不幸があり、緊急帰国したが、ジェット機をチャーターするなど超速で再来日。隔離期間を経て戻ってきた。「野球は失敗の連続。誰かがアウトにならないと、試合は終わらない」と凡打した若手を慰めるが、この日は一撃で試合を決めた。
来日2年目。劇的な一振りで大好きな神戸牛が、また待っている。「コウベモトマチ!」。モチベーションは最高級の和牛だ。甲高い声で求める。「このチームは最後の最後まで諦めない。相手チームがみんなでハイタッチをするまで諦めない」。対戦成績は2勝3敗。決戦の場をほっともっと神戸に移す。96年に「がんばろうKOBE」で日本一になった栄光の舞台だ。第6戦の先発は、エース山本。逆転日本一へ、潮目が変わった。【真柴健】
▼ジョーンズが9回に代打で決勝アーチ。日本シリーズで代打でVアーチを打ったのは、01年<4>戦の副島(ヤクルト)以来20年ぶり。最終回に打った選手は92年<1>戦杉浦(ヤクルト=延長12回)00年<1>戦ニエベス(ダイエー)に次いで3人目となった。なお、代打本塁打は今年の<1>戦モヤ以来30人、32度目で、シリーズで2本の代打本塁打が出たチームは70年ロッテ以来51年ぶり2度目。70年ロッテは井石が1人で2本記録しており、2人が代打本塁打を打ったのは今回のオリックスが初めて。
◆ジョーンズのポストシーズン本塁打 大リーグでは、オリオールズ時代の14年ア・リーグ優勝決定戦<2>戦(オリオールパーク)で1本放っている。オ軍の3番センターで出場し、3回に3-3の同点に追いつく2ランを放った。この試合で相手のロイヤルズの2番を打っていたのが青木(現ヤクルト)。試合は6-4でロイヤルズが勝った。
◆アダム・ジョーンズ 1985年8月1日、米カリフォルニア州生まれ。03年ドラフト1巡目でマリナーズ入団。06年メジャーデビュー。08~18年はオリオールズ、19年はダイヤモンドバックスに在籍。11~17年に7年連続25本塁打以上。メジャー通算1823試合、1939安打、282本塁打、945打点、打率2割7分7厘。球宴選出5度、ゴールドグラブ賞4度、13年シルバースラッガー賞。13、17年WBC米国代表。オリックスでは昨年からプレーし、公式戦通算16本塁打。188センチ、98キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸4億4000万円。
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