Wednesday, October 18, 2023

時間栄養学とは? 食事の時間とポイントをわかりやすく解説 - 朝日新聞デジタル

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時間栄養学とは
(デザイン:西條那菜)

 最近体力が落ちてきたなあ、もう少し痩せないと、もう少し筋力維持しないと……と思っている中高年の人は多いのではないでしょうか。時間栄養学という食べるタイミングを意識した栄養学にトライしてみませんか?

 この記事では、時間栄養学とは何か、いつ、どのような食事をとればよいのかをわかりやすく解説します。

<目次>


1.時間栄養学の概要

大空の下でストレッチをする夫婦

 時間栄養学とは、「いつ食べるか?」に注目した新しい学問です。食べるタイミングを普段と少し変えるだけで、さらに健康的でウェルビーイング(心身ともに健康で満たされていること)な毎日をおくれる可能性があります。 

(1)時間栄養学とは

 今までの栄養学では、「何をどれだけ食べるか」が大事でした。例えば、毎日ラーメンやファストフードを食べていると太りやすいのは皆さんご存じの通り。しかし、そのラーメンを毎日決まった時間に食べていたら、それは太る原因にはならない可能性があります。

 それが時間栄養学なのです。食べない、食べる量を減らす、のような従来のダイエットとは異なり、食べる時間を変えて食べる量は変えない、といった実践しやすい新しい食べ方を提案しています。

 また、効率よく筋肉を増やすには、朝食にたんぱく質を摂取するとよい、というのも時間栄養学の成果事例です。このように、時間と内容を考えて食事を摂取することで健康維持を実現する栄養学が、時間栄養学なのです。

(2)時間栄養学が注目されている背景

 時間栄養学は、体内時計の研究から生まれました。2017年に体内時計研究がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで、時間栄養学も注目されるようになりました。

 からだの中には、地球の自転に合わせた24時間を計る仕組みが備わっていて、それは時計遺伝子が制御しています。からだの中の一つひとつの細胞が時を刻んでいることが、私たちの食のタイミングと関連しているのです。

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2.時間栄養学と体内時計の関係

笑顔で目の前の食事に手を合わせる女性

 食べるタイミングで、どうして食事の効果が変わるのでしょうか? それは、私たちのからだのなかに、体内時計があるからです。体内時計は、食事の吸収や代謝の機能を調節し、その機能に昼夜差を作ります。そのため、タイミングによって食事や栄養の吸収や効果が異なることがあるのです。 

(1)そもそも体内時計とは

 体内時計は24時間を計る体内のシステムです。体内時計があることで、時計のない部屋に閉じこもっていても、なんとなく24時間のうちに寝て、起きてを繰り返すことができます。

①体内時計が乱れた状態とは
 体内時計が乱れた状態は、どんなときでしょうか? 海外旅行による時差ボケは、わかりやすい例でしょう。夜勤やシフトワークは、体内時計に逆らって生活するため、慢性的な時差ボケ状態になっていることも多いです。

 このような働き方は、肥満や高血圧、がんなどの原因になります。また、「平日は早起きですが、休日はゆったりとお昼頃まで寝ています」といった生活習慣も、平日と休日で生活リズムのズレが生じ、気づかないうちに「週末時差ボケ」になっていることもあります。

②体内時計を乱れさせる原因
 不規則な生活は時差ボケ状態を引き起こすだけでなく、体内時計そのものを乱れさせる原因にもなります。特に、夜の青い光は、体内時計の夜型化をもたらします。青色の光はLEDライトに多く含まれることから、パソコンやスマートフォンの明るさを下げたり、暖色系の色に変えるナイトモードにしたりすることが効果的です。

 また、夜遅い食事や夜遅くの激しい運動も、体内時計を夜型化させてしまい、体内時計の乱れの要因になります。夜は夜食を控え、運動もヨガなどのリラックス系のものに切り替えるとよいでしょう。

(2)朝食の摂取で体内時計はリセットされる

 人の体内時計は24時間よりも少し長く、遅れやすい性質をもっています。よって、毎日、朝日を浴びて朝ごはんを食べることで、体内時計を24時間にリセットすることが大事です。また、朝食を食べることで午前中の体温が上がり、より活動的に過ごすことができます。

(3)体内時計は食事内容の影響を受ける

 体内時計は、食後に膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンによって調節されます。例えば、炭水化物を食べると、血糖値が上がり、インスリンが分泌され、そのインスリンが体内時計を調節します。

 また、たんぱく質を摂取すると「IGF-1」というホルモンが分泌され、それが体内時計を調節します。さらに、最近の研究では、カフェインやポリフェノールなどにも体内時計の調節作用がみつかっています。

(4)時間栄養学はダイエットにも関係している

 朝食欠食や遅い夕食の習慣がある人は、肥満になりやすいことがわかっています。また、AI食事管理アプリ「あすけん」のユーザーデータを解析した結果、体重変化と関連が高かった項目は、夕食時の炭水化物量でした。

 つまり、朝食を多めに食べ、夕食を少なくすることが、ダイエットを効率よく成功させるコツというわけです。夕食時に主食(ご飯など)を半分にするのも、効果的かもしれません。

 一方で、欧米では8時間ダイエットがはやっています。日本ではオートファジーダイエットなどともいわれており、何を食べてもよいが1日8時間以内にすべての食事を済ます、というダイエット方法です。こちらも続けやすい時間栄養学ダイエット法としておすすめです。

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3.【専門家が解説】時間栄養学に基づく食事のポイント

テーブルで焼き魚の料理の前で手を合わせ「いただきます」をする夫婦

 先に述べたように、時間栄養学は、食べるタイミングを普段から意識することが大事です。何も気にせず夜にラーメンを食べるくらいなら、1日の前半のうちにラーメンを食べておき、午後から夜に向けては腸を休ませるような食べ方をすると効果的です。

 この章では、上記のような、時間栄養学に基づく朝食・昼食・夕食、さらには間食のポイントを解説します。

(1)朝食はたんぱく質を意識して

 朝食は、体内時計のリセットを考えて、糖質、たんぱく質だけでなく、魚の油に多く含まれるDHA/EPA、しじみに含まれるオルニチン、イヌリンなどの水溶性食物繊維を取るのがおすすめです。特に、DHAやEPAは、体内時計の調節だけでなく、中性脂肪を減らす効果もあり、夕食よりも朝食時に取る方が効果的という研究結果があります。

 朝のたんぱく質は、筋肉量が落ちやすい高齢者におすすめです。一般的に、朝食は昼食や夕食に比べて、たんぱく質摂取量が少ないことが多いです。しかし、朝のたんぱく質は筋肉の合成をより促進します。

 1食20gを目標に取るとよいので、普段の朝食にもう一品、乳製品、卵、豆類、肉類、魚類などのタンパク質を追加しましょう。

(2)昼食は必ず食べる

 昼食を食べない人もいますが、ぜひ1食分きちんとバランスよく食べることをおすすめします。食後に眠くなるので食べないという人もいますが、実は昼食を抜いても午後は一時的に眠くなります。昼食後に眠くなる人は、お昼休みに時間があれば、10分程度の昼寝をすると効果的です。

 ただ、30分以上寝ると、その後にぼーっとしてしまい(睡眠慣性といいます)、逆に仕事が進まなくなるので要注意です。お昼寝前後のカフェイン摂取も、午後のパフォーマンス向上に役立ちます。

(3)間食はむしろ食べた方がいい

 おやつを食べると太るから、と食べない人も多いと思います。しかし、間食を取った方がよいこともあります。例えば、セカンドミール効果という、2食目の食事は血糖値が上がりづらくなる生理現象です。間食を少し食べておくと、その後の夕食時に血糖スパイク(急激な血糖上昇)が起こりづらく、肥満や糖尿病のリスクを減らすことができます。

 特に、炭水化物やたんぱく質、食物繊維(特にイヌリンや難消化性デキストリンなどの水溶性の食物繊維)を間食に取ると効果的です。

 また、仕事などで夕食が遅くなってしまう人は、夕方に間食としてパンやおにぎりを取っておくことで、夕食を分食することができます。夜遅くにどか食いするよりは、このように分食する方が健康的です。

(4)夕食は血糖値に要注意

 朝食と夕食で同じものを食べた場合、夕食後の方が血糖値が上がりやすく下がりづらいことがわかっています。よって、夕食時は糖の吸収を抑えるカテキン茶や食物繊維などを一緒に取ると効果的です。

 また、夕食時は主食の炭水化物や脂質を減らすことで、ダイエット効果も期待できます。夕食後はなるべくカロリーの多いものは取らず、カフェインなども夕方以降は控えることが体内時計を健康に保つコツです。

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4.時間栄養学を取り入れて心身ともに健康な生活を 

 時間栄養学は、普段から食事時間を意識することが大切です。コンビニでも、ふと時間栄養学を意識してもらう「サイクルミー」という取り組みが進んでいます。サイクルミーは、ラベルに時計のマークを付けることで、食べるタイミングを意識してもらう商品です。

 筆者も時間栄養学研究者として、時間栄養学がより身近なものとなるよう、開発を後押ししています。ウェルビーイングな生活のために、食事の栄養だけでなく、時間にも目を向けてみませんか。

(広島大学大学院 医系科学研究科 准教授  田原優、編集協力:スタジオユリグラフ 中村里歩)

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  • 田原優
  • 田原 優(たはら・ゆう)

    広島大学大学院 医系科学研究科 准教授

    2013年に早稲田大学にて博士(理学)を取得。2013年より早稲田大学 助手、早稲田大学 助教、2016年よりUniversity of California Los Angeles 助教、2019年より早稲田大学准教授。2022年より現職。著書に、体内時計応用法(杏林書院,編著,2022)、体を整えるすごい時間割(大和書房,2019)、体内時計健康法(杏林書院,共著,2017)など。

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