かんだり飲み込んだりすることが難しい人向けの「嚥下(えんげ)食」を用いた外食の普及を目指す取り組みが、山形県鶴岡市で進んでいる。食べやすさと同時に食べる喜びも実感してもらおうと、新鮮な旬の食材を使って見た目や食感にも工夫を凝らしている。
16日、市内の温泉保養所「うしお荘」で、地元食材を使ったコース料理の試食会があった。食べ物をかんだり飲み込んだりすることが難しい嚥下障害の家族がいる県内の3組が、甘エビや庄内柿などを用いた前菜からデザートまでを味わった。
市内の医療・介護関係者で2017年に結成した「鶴岡食材を使った嚥下食を考える研究会」が主催。コース料理は、取り組みに賛同する市内の若手料理人と半年かけて試作を重ね、完成させた。
近くの漁港で水揚げされた鮮魚の「お造り」は、細かく刻んでから刺し身のように成形。「山形牛のタルタルステーキ」は表面に焦げ目を付け、中はレアにした2層重ねだ。
みんなで外食「うれしい」
市内のフランス料理店「ブランブランガストロパブ」の五十嵐督敬(よしのり)シェフ(38)が「肉を細かく刻んで、表面は火入れしています」と説明すると、同市の高橋彰さん(78)は「肉の味がよくわかる」と満足そうにうなずいた。
高橋さんは脳梗塞(こうそく)を患ってかみくだく力が弱くなり、軟らかいものしか食べられない。自宅では宅配の療養食を利用しながら、妻の米子さん(72)と孫が圧力鍋を使ってシチューなどを作っている。
米子さんは「外食は食べられないので行きたがらなくなった。(嚥下食を扱う飲食店が増えて)誕生日に連れ出して会食できたら、みんながうれしい」と目を輝かせる。
嚥下障害、子供も切実
嚥下障害は高齢者に限った話ではなく、生まれつきかむ力が弱い子供にとっても切実だ。市内の児童発達支援事業所に勤める五十嵐みちよさん(46)も見学に訪れ「ミキサーですりつぶした食べ物を食べている子供たちにも、他の子供と同じように食事の楽しさを味わわせたい」と話す。
研究会の共同代表で、鶴岡協立病院の田口充・摂食嚥下リハビリテーション学会認定士は「嚥下障害になると食べる喜びが失われ、人生を楽しむことが難しくなる傾向にある」と指摘。外食も含めて「特別なものではなく、当たり前に提供される嚥下食文化を作っていきたい」と語った。
コース料理は、うしお荘▽ブランブランガストロパブ▽ナチュラリテ▽日本料理わたなべ――の市内計4店舗で予約を受け付け、11月から提供する予定。【長南里香】
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