この記事は2回目/全2回
小田たちの発見は出発点にすぎない。人間自身が作り出したこの地球規模の環境災害を少しでも軽減したいなら、この細菌はもっと迅速かつ効率的に働く必要がある。
イデオネラ・サカイエンシスに関する最初の実験で、彼ら研究チームはこの細菌と一緒に長さ2センチ、重さ0.05グラムのプラスチックフィルムを試験管に入れ、室温で放置した。すると、細菌は約7週間でこの小さなプラスチックを分解した。
極めて印象的な結果ではあったが、プラスチック廃棄物に有意義な影響を与えるには、そのスピードはあまりにも遅すぎた。
「イデオネラ酵素を進化へと導くことが、科学者たちの目標なのです」
微生物たちの驚くべき進化
およそ25年前、科学者たちの間には、地球上に存在する微生物の種類はおそらく1000万種以下だろうというコンセンサスがあった。だが、この10年で研究が進み、その数は1兆種にものぼることが判明した。そしてその大部分が、いまだに未知の存在なのだ。
人間の体内では、病気に対する抵抗力から気分にいたるまで、あらゆるものに影響を与える微生物が見つかっている。深海では、高温の水が噴き出す熱水噴出孔に生息する微生物が発見されている。さらに石油鉱床では、化石燃料を分解できるように進化した微生物が発見された。探索すればするほど、驚くべき発見は増えるばかりだ。
その順応性の高さから、微生物はこの激動の時代に理想的な仲間といえる。彼らは、ダーウィンやその時代の人々が知ったら仰天するような方法と速度で進化しているのだ。
そしてこの歴史的な瞬間に、人類は世界中でいっそう過酷な環境を驚異的なスピードで作り出している。他の動物や植物には、変わりゆく居住環境に負けないスピードで解決策を生み出す望みがないのに対し、微生物は迅速な適応を見せている。
酸性化した水の中でも増殖する微生物や、人間が排出した有害な化学物質を分解する微生物が発見されている。小田が指摘したように、人間自身が作り出した諸問題に対して、微生物は自分なりの解決策を提案しているのだ。
プラスチックリサイクルに起きた革命
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