腸の酸性化を促し、善玉菌のはたらきをアップ。
心身の健康に腸が深く関わっていると話題だが、そのメカニズムを消化器専門医の松井輝明先生に伺った。
「小腸と大腸、どちらにも無数の腸内細菌が棲んでいます。特に大腸には群生していて『腸内フローラ』と呼ばれるほど。腸内細菌はその性質から善玉菌、悪玉菌、日和見菌に分けられ、なかでも注意すべきは悪玉菌。これが増えると腸内に有害物質が発生し、腸壁から血液を通して全身へ。免疫力の低下などさまざまな健康障害につながります。一方、善玉菌には腸内を酸性化させる役割があります。弱酸性の腸内は、善玉菌が活性化しやすい環境。悪玉菌の増殖も抑えられます」
腸内環境をととのえるためには食べ物が重要になるが、なかでも効率がいいのがヨーグルト。
「乳酸菌だけでなくビフィズス菌が含まれているものがあり、乳酸菌はおもに小腸で、ビフィズス菌は大腸ではたらきます。腸内環境を弱酸性にととのえるうえ、ビフィズス菌は強力な殺菌作用のある酢酸も産生。その効果を得るには、毎日食べることが大切です」
すごい! ヨーグルト菌活
1、脂肪細胞にはたらきかけ、肥満になりにくく。
ビフィズス菌から作られる「短鎖脂肪酸」という成分がカギ。脂肪細胞の受容体に、脂肪を吸収させないようにはたらきかけるうえ、今ある脂肪の燃焼をも促してくれる。この2つの作用により、太りすぎを防いで健全な体づくりが目指せる。
2、腸内を弱酸性にして、善玉菌を増やす。
ヨーグルトに含まれる乳酸菌やビフィズス菌の力は偉大。2つの菌が発酵してできる乳酸に加え、ビフィズス菌が発酵して生まれる酢酸などの短鎖脂肪酸によって腸内が弱酸性化。善玉菌が増えやすく、はたらきやすい環境にととのえる。
3、“自分にぴったりの菌”じゃなくても良い効果が!
自分の腸内に棲む菌と相性の良い菌が入ったヨーグルトを食べるのが一番だけど、腸内細菌は種類も数も十人十色、どれが合うのか探すのは難しい。でも、ヨーグルトに含まれる菌そのものが自分のお腹にいる善玉菌を元気にしてくれるので、摂ることで十分効果あり。
4、免疫機能を調整して、アレルギー予防に。
小腸は体の中で最も多く免疫器官が存在し免疫を高める役割があるため、小腸をととのえることで感染症対策にも期待できる。大腸は小腸で免疫がはたらきすぎた時のブレーキとなり、免疫の過剰反応である自己免疫疾患や花粉症などのアレルギーの予防に。どちらもととのえることが大切。
5、落ち込みが抑えられ、気持ちが前向きに。
腸内で有害物質が発生すると、腸壁から血液を介して自律神経を刺激し、ネガティブ思考になりやすくなるなど、メンタルにも悪影響が。でも、ビフィズス菌など善玉菌を増やせば、腸壁のバリア機能が強化され、有害な物質の吸収を防げる。
松井輝明先生 消化器専門医、医学博士。著書に『日本人の大腸は「劣化」している! 大腸活のすすめ~腸は自分で変えられる~』(朝日新聞出版)が。消化器一般、機能性食品の臨床応用を専門に研究し、メディアでも活躍。
※『anan』2022年5月4‐11日合併号より。写真・小笠原真紀 取材、文・保手濱奈美 撮影協力・UTUWA
(by anan編集部)
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