Saturday, April 30, 2022

魚を食べると頭が良くなるのは本当だった!? 子どもの認知発達に対する栄養介入試験の検討結果 - スポーツ栄養Web

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魚を食べると頭が良くなると言われるが、確かに認知機能にプラスの影響のある可能性が、就学前の子どもを対象とする栄養介入試験のシステマティックレビューから示された。米国の研究者らが2000年以降に実施された無作為化比較試験を抽出して検討した結果である。

魚を食べると頭が良くなるのは本当だった!? 子どもの認知発達に対する栄養介入試験の検討結果

就学前の子ども対象の栄養介入による認知機能への影響を検討

人間の脳は、その構造を形成して維持するために、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、水を含む、すべての栄養素を必要としている。発達中の人間の脳、つまり子どもの脳はこの点がより重要な可能性があり、乳幼児の認知発達は適切な栄養に依存すると考えられる。ただし、就学前の子どもを対象に行われた栄養介入研究のシステマティックレビューはこれまであまり行われていない。この論文の著者らは、システマティックレビューとメタアナリシスのガイドライン(PRISMA)に則して、以下の研究を行った。

12件の未就学時対象栄養介入RCTを抽出

文献検索は2021年5月に、PubMed、PsycInfo、Academic Search Complete、およびCochrane Libraryを用いて行われた。適格条件は、2000年以降に2~6歳の子どもを対象に実施された、栄養介入の認知機能への影響を検討している無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)。検索キーワードとして、栄養素、食事の多様性、子どもの発達、学校の成績などを設定。除外基準は、横断研究、非無作為化試験、サンプルサイズが60人未満の研究、対象が2歳未満または6歳を超過している研究、疾患治療目的での栄養介入試験(例えば、てんかん、フェニルケトン尿症、グルテン関連神経障害など)。

1名の研究者が検索、ハンドサーチによる追加、および重複の削除、タイトルと抄録に基づくスクリーニングを実施。別の2名の研究者がそれぞれ独立して全文精査を行い、採否を検討。意見の不一致は4人目の研究者を含めた討議によって解決した。重複削除後の1万4,453報から最終的に12件のRCTが適格条件を満たす研究として採用された。

5件は単一のサプリ、3件はMMN、他の3件は食事ベースの栄養介入

抽出された12件のRCTの6件は先進国で実施され、他の6件は低中所得国で実施されていた。最も古いものは2004年に完了し、最も新しいものは2020年に完了していた。介入期間は2~10カ月だった。6件の研究はバイアスリスクが低く、他の6件のバイアスリスクは中程度と判定された。研究対象は多くが健康な小児だったが、葉酸レベルが不十分な小児、栄養不良や微量栄養素欠乏症のリスクがある小児、貧血、駆虫薬を服用中の小児を含む研究も存在した。

12件中5件は、サプリメントベースの栄養介入が行われていた。用いられていたサプリは、グアバ、DHA、鉄、ビタミンB群、およびヨウ素添加塩。3件の研究は、複数の微量栄養素(multiple-micronutrient;MMN)による介入が行われ、他の3件は食事として脂身の多い魚を摂取する食品ベースの栄養介入が行われていた。残り1件は、強化粉乳の摂取と認知刺激トレーニングとを組み合わせた介入を行っていた。

認知機能の評価は、学習能力、言語的推論、知的機能、情報処理速度、語彙、単語推論、識別の速度と正確さ、運動能力などを、既報文献に基づく種々の指標で評価していた。

12件中8件は何らかの正の影響を報告

単一栄養素による介入試験

単一栄養素で介入した5件のRCTのうち、ビタミンB群、ヨウ素添加塩、グアバによる介入では、認知機能への有意な影響を報告していなかった。

有意な結果を報告していた2件の研究のうち1件は鉄による介入であり、鉄欠乏性貧血の子どもでは、鉄の摂取によりパフォーマンスタスクの精度と識別速度が向上することが報告されていた。ただし、ベースラインで鉄レベルが基準値内にある子どもでは、有意な影響が認められていない。

もう一つの研究はDHAサプリメントによる介入で、プラセボ群の間で認知機能スコアに有意差を認めなかったものの、全体的な解析で血中DHAレベルの高さと、聴解力や絵画語彙テストのスコアとが有意に相関していた。

複数の微量栄養素(MMN)による介入試験

複数の微量栄養素(MMN)で介入した3件のRCTの1件は、生後36~79カ月の小児に、朝食時に8gのMMNを追加し11週間の介入で、認知機能指標のスコアが対照群より有意に上昇したことを報告している。

一方、別の研究では、MMNによる介入ではなく、通っている保育施設の質の高低が認知機能スコアと関連していたと報告していた。その研究では、子どもたちの遊び場、利用できる学習機会、環境の組織化などに基づいて、2名の心理学者が幼稚園の質を判定していた。

残るもう一つのMMNによる研究は、有意な介入効果を報告していなかった。

食品ベースの介入試験

3件の食品ベースの介入試験は、いずれも脂肪の多い魚を含む食事による介入を行っていた。そのうちの1件はドイツの幼稚園児に対して、サケを週に3回、16週間摂取させ、非言語的流動性知能の指標にわずかな改善がみられたという。対照群の牛肉ではスコアが変化なかった。

その他の2件は、ニシンやサバで介入し、1件は認知機能の総合スコアには有意差がないものの、情報処理速度と細かい運動協調性で有意差が認められたと報告し、他の1件は有意差なしとしている。これらの試験での対照群では、牛肉や羊肉、鶏肉により介入されていた。

まとめると、12件の研究のうち8件は、未就学児に対する栄養介入による認知機能に何らかの有意な正の影響を報告していた。サプリメントベースでは、鉄と複数の微量栄養素に有用性が認められ、食品ベースでは魚の摂取量の増加が有益な効果を示していた。

著者は、「このレビューの結果は、就学前の数年間の適切な栄養素摂取の重要性、および認知機能の発達において十分な栄養が果たす重要な役割を強調している」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Effects of Nutritional Interventions on the Cognitive Development of Preschool-Age Children: A Systematic Review」。〔Nutrients. 2022 Jan 26;14(3):532〕
原文はこちら(MDPI)

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