2019年11月下旬、英スコットランドの砂浜で10歳のクジラの死体が見つかった。解剖して胃から出てきたのは、なんと100キロものプラスチックなどのごみの塊だった。この悲劇はニュースで大々的に報じられた。出てきたごみの量があまりにも膨大で、過去の同様の事例がかすんでしまうほどだったからだ。
胃にごみがたっぷりと詰まった巨大なクジラの死体が発見される例は、世界中の海岸で増えている。このような痛ましい事例が実際に増えているのか、それとも、世間がプラスチック汚染に敏感になっているだけなのかはわからない。
だが、プラスチックの生産量は指数関数的に増え続けている。1950年には210万トンだったが、2015年には4億700万トンにもなり、2050年までにはさらに倍増すると予想されている。
食べられたプラスチックなどのごみが海洋動物に与える影響、彼らがそれを食べる理由、どのように感じているのかについては、実はまだわからないことだらけだ。食べられない物を食べて死んだという衝撃的な事実は、解剖により判明するものの、一般に、プラスチックを摂取してもすぐに死んでしまうわけではない。
たいていの場合、その影響はゆっくりと少しずつ現れる。他の種よりも影響を受けやすいある種の動物たちに、ひそかに目立たない形で害を及ぼしていく。今の段階で言えるのはこの程度だ。
以下では、海洋動物とプラスチックについて5つの素朴な疑問に答えてみよう。
海洋動物はなぜプラスチックを食べる?
米スタンフォード大学ホプキンス海洋研究所の博士研究員で、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(協会が支援する研究者)でもあるマシュー・サボカ氏によると、科学者はこの問題の答えに窮しているという。
プラスチックがいたる所にあることはすでにわかっている。毎年およそ800万トンものプラスチックが海に流出し、動物が食べていることもわかっている。しかしながら、どうしてそうなっているのかを突き止めるのは、本当に難しい。「海で実際に何が起きているのか、驚くほどなにもわかっていないのです」と同氏は話している。
従来の説では、動物がプラスチックを食べるのは、そこにプラスチックがあるから以上の何物でもないと思われてきた(カタクチイワシなど一部の動物にとっては、プラスチックから食べ物のような匂いがするのかもしれないが)。だが、これでは、なぜ特定の種類のクジラ(マッコウクジラ、ゴンドウクジラ、アカボウクジラなど、深く潜るハクジラ)ばかりが胃をプラスチックでいっぱいにして死に、浜辺に打ち上げられるのかの説明にはならない。
この謎の手掛かりは、狩りの方法にあるかもしれない。これらの種は、深海で狩りを行い、時には水深500メートルを超えることもある。そこは暗黒の世界だ。そこで、彼らは反響音で位置を特定するエコーロケーション(反響定位)を使い、イカなどの獲物を狩る。ハクジラにとっては、プラスチックごみが、食べ物と同じように「聞こえる」可能性がある、とサボカ氏は言う。
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December 31, 2019 at 01:00AM
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クジラの胃に100キロのごみ なぜプラスチック食べる|ナショジオ|NIKKEI - 日本経済新聞
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