脂肪肝とは、肝臓に脂肪が過剰にたまった状態のこと。2型糖尿病や肥満のある人は、脂肪肝を合併していることが少なくない。 「日本食」が脂肪肝の進展を抑制するのに効果的という研究が発表された。「大豆・魚・海藻」などを食べる日本食のスタイルは有用だという。 日本食のスタイルの特徴のひとつは、納豆・豆腐・煮豆・味噌などの大豆食品をよく食べること。納豆を食べる食事スタイルが、日本人の長寿の要因になっているという研究も発表されている。
糖尿病の人は脂肪肝にもご注意
脂肪肝とは、肝臓に脂肪が過剰にたまった状態のこと。肝臓の細胞の約3割以上に脂肪がたまると、脂肪肝と診断される。2型糖尿病や肥満のある人は、脂肪肝を合併していることが少なくない。 食事でとった糖質や脂質は、腸で吸収され、肝臓で脂肪酸やブドウ糖に分解され、中性脂肪がつくられる。この中性脂肪は肝細胞のなかにためこまれ、必要に応じてエネルギーとして用いられる。 しかし、食べ過ぎや運動不足などで、体の消費エネルギーと摂取エネルギーのバランスがとれなくなると、使用するエネルギーよりも脂肪の方が多くなり、肝臓や皮下脂肪にどんどんたまっていく。 脂肪肝を放置していると、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中などを引き起こすリスクが高まる。肝臓にたまった脂肪が、血流にのって全身の血管に運ばれると、血液中の悪玉のLDLコレステロールが増えてしまう。そうなると、血管壁にコレステロールがたまりやすくなり、動脈硬化などをまねく。脂肪肝があると「インスリン抵抗性」も進行
脂肪肝になっても、初期には自覚症状を感じにくい。しかし、知らないあいだに肝臓がダメージを受け、気づいたときには肝機能が落ち、肝炎を起こし「肝硬変」や「肝がん」など、命に関わる病気に進行している場合もあるので、注意が必要だ。 脂肪肝があると、インスリンが効きにくくなる「インスリン抵抗性」も進行しやすくなる。内臓脂肪の蓄積や脂肪肝が原因で起こるインスリン抵抗性は、血糖を下げるホルモンであるインスリンに対する感受性が低下して、インスリンが働きにくくなった状態。 2型糖尿病のリスクを高め、メタボリックシンドロームの重要な原因のひとつとみられている。肝臓・骨格筋・脂肪組織にそれぞれインスリン抵抗性が生じる。「大豆・魚・海藻」を食べる日本食スタイルが効果的
糖尿病とともに生きる人は、脂肪肝の進展を抑えることが大切だ。「大豆・魚・海藻」といった日本食が中心の食事スタイルにより、脂肪肝の進展を抑えることができるという研究を、大阪公立大学が発表した。 「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」は、アルコールを除くさまざまな原因により脂肪肝になった結果、引き起こされる肝臓の障害の総称。 また、「線維化」は、脂肪肝により肝臓にかさぶたのような結合組織が過剰にたまり、通常の機能が果たせなくなった状態。 2型糖尿病、脂質異常症、肥満などとも関連が深く、放置していると肝臓の病気が進行して、肝炎や肝硬変、肝臓がんになるリスクが高まる。日本食スタイルで脂肪肝の進展を抑制
脂肪肝の人が日本食スタイルの食事をすることで、肝線維化の進展度が抑制されることを、大阪公立大学が明らかにした。 とくに「大豆」「魚介類」「海藻類」を食べることが、肝線維化の進展の抑制と関連していた。 また、納豆・豆腐・煮豆・味噌などの大豆食品の摂取量が多い人では、筋肉量が多く、筋肉量が多いグループは肝線維化の進展が抑制されていた。「日本食スコア」の高い人は肝線維化の進展度が抑制
「日本食スコア」は、ごはん・味噌汁・漬物・大豆食品・緑黄色野菜・果物・魚介類・キノコ類・海藻類・緑茶・コーヒー・牛肉・豚肉の12食品・食品群を含む、日本食パターンの摂取量に着目したスコア
「日本食スコア」が高いグループは、肝線維化の進展度が抑制されていることが分かった
出典:大阪公立大学、2023年
研究は、大阪公立大学大学院生活科学研究科の松本佳也准教授、医学研究科の藤井英樹講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」にオンライン掲載された。 「これまで日本で、NAFLDに対する食事療法で有効な候補はありませんでした。今回"日本食パターン"がNAFLDの治療に有効である可能性が示されました。介入研究によるさらなるデータ検証が必要ですが、NAFLD患者の食事療法のひとつの選択肢としてお考えいただくと良いと思います」と、松本准教授は述べている。納豆がなぜ体に良い? 納豆菌が寿命を延ばす
日本食のスタイルの特徴のひとつは、大豆をよく食べること。日本的な食事スタイルが日本人の長寿の要因になっている可能性がある。 納豆、豆腐、枝豆、みそ、大豆の煮豆、厚揚げ、がんもどき、おから、豆乳など、大豆食品は日本食に欠かせない。 とくに納豆は、糖尿病や高血圧、脂質異常症の食事療法にも活用したい食品だ。納豆は、煮大豆を納豆菌が発酵させることでできる食品で、この発酵過程で「ナットウキナーゼ」をはじめとするさまざまな栄養素が生成される。 納豆などの大豆食品に含まれる「イソフラボン」についても、骨粗鬆症の予防や脂質代謝の改善などに有効だという報告がある。 大阪公立大学は、納豆がなぜ体に良いのかを分子メカニズムで解明した研究も発表している。 納豆の製造に古くから利用されている納豆菌は、枯草菌の一種で、日本で利用されている納豆の多くは、宮城野株を使って作られている。 研究グループは、宮城野菌スターター由来の納豆菌株を用いて実験を行い、納豆菌を与えた線虫は、寿命が延びることを明らかにした。 詳しく解析したところ、納豆菌による寿命の延伸作用に、自然免疫や寿命に関わることが知られる細胞内情報の伝達経路や、血糖値を下げるインスリンやインスリンに似た構造をもつホルモンであるインスリン様成長因子(IGF)の伝達経路が関与していることが分かった。 また、納豆菌を摂取することで、宿主の生体防御や自然免疫に関わる遺伝子群の発現が上昇することも分かった。納豆菌の摂取により、酸化ストレスに耐える強さを示すストレス耐性なども向上していた。 糖尿病のある人が高血糖の状態が続くと、酸化ストレスが亢進することが知られている。そうなると、インスリン作用の低下により、寿命延長効果が打ち消され、寿命が短縮してしまうと考えられる。 「納豆は古くから日本に馴染みのある食品で、身近にある利用しやすい安価な食品です。納豆を、健康寿命の延伸に役立てられる可能性があります」と、研究者は述べている。Severity of Liver Fibrosis Is Associated with the Japanese Diet Pattern and Skeletal Muscle Mass in Patients with Nonalcoholic Fatty Liver Disease (Nutrients 2023年2月26日)
Impacts of Bacillus subtilis var. natto on the lifespan and stress resistance of Caenorhabditis elegans (Journal of Applied Microbiology 2023年4月20日)
大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A(厚生労働省)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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