Wednesday, January 20, 2021

マンU、やはりポグバはすごかった。驚きの一振りで呼び込んだ歓喜、好調を証明した戦う姿勢【分析コラム】 - フットボールチャンネル

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逆転できる強み

マンチェスター・ユナイテッド
【写真:Getty Images】

 ちょうど昨年の今頃、オーレ・グンナー・スールシャール監督には非難が集中していた。安定した結果が出ておらず、首位リバプールとは33ポイント差をつけられての5位と大きく水を開けられていたからだ。クラブOBのリオ・ファーディナンドは「未来への基盤を築いていると示すものが何もない」と話すなど、古巣に対しやや呆れ気味だった。

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 それでもスールシャール監督には自信があったのかもしれない。同指揮官は当時、このようなコメントを残していた。

「この仕事に就いてからまだ1年足らず。だから、やり方を変えて別のことをするつもりはない。我々には我々のやり方が存在する。確かに他のチームは良くやっているが、ユルゲン・クロップだって今のチームを構築するのに4年間を費やしている。絶えず言ってきたが、私にも時間が欲しい」。

 当時は「時間で解決できる問題なのか…」と疑問を抱いた人も少なくなかったはずだ。しかしスールシャール監督は自身の発言の責任を果たすかのように、大事な時期に結果を残し、何度も解任論を吹き飛ばしてきた。そして上記のコメントから1年経った現在、マンチェスター・ユナイテッドはプレミアリーグの首位にいる。見事なストーリーだ。

 スールシャール監督のチームには圧倒的な強さはない。たとえばリバプールやマンチェスター・シティのようなストロングポイントとなるスタイルがあるわけではないし、相手を完璧に封じ込める策を試合ごとに用意しているわけでもない。しかし、勝つことができる。とくに、現在は実力で劣る相手から勝ち点を取りこぼすことが極めて少なくなっている。上位にいるためには必要不可欠な条件を、ユナイテッドはクリアし続けているのだ。

 また、プレミアリーグ18試合を消化した時点でユナイテッドが先制を許した試合は8つあった。そのうちの6試合で見事に逆転勝利を収めている事実が示す通り、今の同チームには意地と粘り強さがある。以前までは考えられなかった姿だ。

機能しなかった両サイド

 そしてユナイテッドは、現地20日に行われたフラム戦もスコアをひっくり返して勝利。勝ち点3を積み上げ首位をキープすることに成功した。

 そのフラム戦を振り返ってみると、かなりタフなゲームだった。スコット・パーカー監督率いるチームは、最後に複数失点を喫したのが第11節マンチェスター・シティ戦とかなり守備の安定感を重視している。引いた相手の崩し方に課題を持つユナイテッドにとっては最もやりづらい相手だったのだ。

 早い時間に先制点が生まれたことで、試合の構図は守備時5-4-1のブロックを築くフラムに対してユナイテッドがボールを持ち続ける、というより単純なものとなった。その中で優位に立っていたのは、やはりリードを奪ったフラム。ユナイテッドはファーストシュートを生むまで20分もの時間を費やした。

 相手5-4-1の中盤底2枚の間や脇をブルーノ・フェルナンデスが効果的に使うシーンは何度かあったが、ユナイテッドにとって攻撃面で最大の問題となっていたのはサイド攻撃の薄さだ。左サイドのルーク・ショーとアントニー・マルシャルは噛み合わず、右のアーロン・ワン=ビサカとメイソン・グリーンウッドにも同様のことが起こっていた。

 フラムの守備戦術が機能していたというよりは単純な自滅だった。たとえばワン=ビサカが上がるタイミングでグリーンウッドがパスを出したことでズレたり、ショーからのパスをマルシャルが感じ取れなかったり、お互いの距離感が近すぎて相手に寄せられやすい状況を作ってしまったりと、左右両サイドがどうにも上手くいかなかった。

 ユナイテッドは21分にエディンソン・カバーニが得点し同点に追いついた。左サイドからのクロスをGKアルフォンス・アレオラがこぼしたことで生まれたが、ボールを出したのはマルシャルでもショーでもなくサイドに流れていたB・フェルナンデス。結局は彼だった。

 その後もユナイテッドのサイド攻撃はあまり機能しなかった。マルシャルは動きが曖昧で怖さを示せず、グリーンウッドはクロスこそ良かったが、肝心のシュートは1本止まり。ワン=ビサカは全体的に中途半端なプレーが多かった。フラムにとってはサイドが怖くないので、守りやすかったのではないだろうか。

圧巻のポグバ

ポール・ポグバ
【写真:Getty Images】

 それでもユナイテッドが逆転することができたのは、やはりこの男の存在が大きかった。ポール・ポグバだ。

 65分、なかなか攻撃がうまくいかない中、ポグバは相手のクリアを綺麗にコントロールし右から中へ侵入。この時同選手の目線は横(左サイド)に向いており、シュートを打つにしても左足、距離もあったことでフラムの選手は誰も寄せなかったが、ポグバはお構いなしに左足を一振り。強烈なシュートは守護神アレオラの手に触れることなくゴール右隅に突き刺さった。

 まさに圧巻、というミドルシュートだったが、ポグバの活躍はこれだけに留まっていない。11分に自陣で相手選手二人を背にしながらも奪われることなくボールを逃がしたようにキープ力は相変わらずワールドクラスで、B・フェルナンデスだけじゃないぞ! と訴えるかのようなパスも冴えていた。

 そして調子の良い時のポグバは戦う姿勢がよく表れる。このフラム戦はまさにそうだった。

 最も印象的だったのは61分の場面。ポグバはハーフウェーライン付近でボールロストし、アデモラ・ルックマンにドリブルを許したが、懸命なランニングで追い、ルックマンが後ろを向いた瞬間に身体をぶつけボール奪取。自らミスを帳消しにしたのだ。

 ルックマンに運ばれた際、自陣にはエリック・バイリーが構えていたので、モチベーションが低下しているポグバであれば彼にプレッシャーを任せていたかもしれない。しかし、チームが好調の中で背番号6も確かな手ごたえを掴んでいるのだろう。明らかにいつもとは違う意識を持っていた。事実、上記したシーン以外にもポグバが守備面で目立つ場面は少なくなかった。

 データサイト『Who Scored』によるスタッツを見てもチーム最多のパス80本を記録しパス成功率85%、キーパス1本、ドリブル成功数2回、タックル成功数全体トップの4回を記録。また、インターセプト数3回も全体トップと、文句の言いようがないパフォーマンスだったことが分かる。

 近年は怪我が多く、メンタル面で揺さぶられることも多いため批判の的になることが少なくないポグバだが、選手としての能力に疑いの念を抱く人はいないだろう。やはりコンディションさえ整っていればワールドクラス。このフラム戦でも、それは大きく証明された。

 厳しいスケジュールの中、B・フェルナンデスは明らかに疲れている。フラム戦でも随所で輝きを放ったが、全体的には少し重そうな印象を受けた。ただ、その中でもポグバが存在感を示し勝てたことは大きな意味を持つ。フランス代表MFの調子が続く限り、ユナイテッドは多くの白星を奪うことになりそうだ。

(文:小澤祐作)

【了】

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