Sunday, January 31, 2021

人間、人を食べるもの、その間にある存在。 | Confetti - カンフェティ

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佐藤修幸によるプロデュースユニットENGが2021年最初に贈る第13回公演は、2020年全公演満席を飾った『ニンギョヒメ』作・演出の福地慎太郎を招いた新機軸エンターテインメントだ。想像の斜め上を行く“食”と“ゾンビ”をテーマに、生きる事への問いを投げかける本作は福地ならではの演出も光る意欲作となりそうだ。主演の吉野哲平、水崎綾、そしてプロデューサーの佐藤修幸と共に意気込みを語ってもらった。 ※取材は全員マスクをして実施。撮影時のみ外してもらいました。

インタビュー写真

生き物の根本的な欲求をテーマに

―――これまでにないエンターテインメントの予感がします。本作の着想はどこから得ましたか?

福地「ENGさんからは『エンターテインメントを意識した作品を』というオファーをいただきました。今まではあるものを焼き直してエンタメにしていたのですが、最初からエンタメを意識して作品を描くのは初めてです。アクションやダンスの要素を入れて自分の中でしっくりくるものは何だろうと思いを張り巡らした結果、本作の糸口を見つけることができました。ザックリ言うと、“ゾンビ物”と“グルメ物”を融合させる形で、人間の『食べる』という根源的な欲求を柱にしています。ゾンビと言っても皆さんが想像するあの腐ったタイプではなくて、精神汚染をされた人間(本作ではイーターと表現)の事で、水崎さん演じるヒロインはそのイーターと人間のハーフです。人間の思考を持ちながらも、どこかに人間を食べたい欲求があり、哲平くんが演じる彼氏(人間)と立場が違う事で物の見え方も違っていくというメインストーリーを考えています。

 本作ではただ食べるということだけでなく、もう一歩、人間の深い欲求の部分に踏み込んでいこうと考えていて、今までに無い結末に結び付けられたらなと思っています。前回、作・演出を手掛けた『ニンギョヒメ』が、これまで積み上げてきたものの到達点にあるのに対して、本作はエンタメのバランスを取ることからこそできる一種の危うさみたいなものを描ければ、僕やENGさんの創作の幅が広がるのではないかと期待しています」

―――非常に面白い世界観ですね。制作にあたってプロデューサーの佐藤さんからはどの様なリクエストをされましたか?

佐藤「ゾンビものという試みは僕から提案しました。ザックリとした提案でしたが、福地くんはそこから“食べる”というキーワードを生み出してくれました。強がる彼氏を食べたくなってしまう彼女という関係性が出来て、これは面白そうだなと。子どもの頃に良く観ていた手塚治先生の『ジャングル大帝』で物凄く衝撃を受けたシーンがあって、森を守ってきたレオが成長と共に肉食獣としての本能に目覚めて、仲良くしてきた森の動物たちを食べたくなってしまうんですね。岩をかきむしりながら叫ぶ『食べたいっっ!』という言葉が衝撃的で、正義の心と肉食獣としての本能の狭間で葛藤する様子を鮮明に覚えています。その“食べる”という生物の本能に直結した欲求をテーマにしたことは人の心にくさびを打ち込むことができる演出家の福地くんらしいなと思っていて、本作でもきっとお客さんの心に何かを残してくれるはずです」

インタビュー写真

エンタメでも福地さんの繊細さは出ると思う

―――主演のお二人は今の段階での情報を聞いて想起するものはありますか?

吉野「正統派の主人公を想像していましたが、どうやら育ちの悪いヤンキーという設定らしいですね(笑)。最初にお話をいただいた時には『食をテーマにしたエンタメ』と聞かされて、なかなか想像できなくて。そこにゾンビという新ワードが出てきて余計に混乱しましたが、先ほどの福地さんと佐藤さんの話を聞いていると、人間の欲求の根幹に迫る深い作品なんだなという気持ちになってきました。ENGさんの舞台は演出家の方によってテイストも様々なのですが、どの作品もしっかりお客さんの心を掴んでいるという印象があり、今回も周りを固めるキャスト陣もすごい方々ばかりなので、重圧を感じていますが、精一杯演じようと思います」

水崎「食がテーマと聞いた時は野菜というかヘルシーなものを想像していましたが、キャスト伝いに『ゾンビらしいよ』という情報が入って、え!? ゾンビなの??と戸惑いました(笑)。でもこれも新しい挑戦だと思いますし、精神汚染された人間という設定が現代の実社会にも共通する部分もあると感じて非常に興味を持ちました。福地さんが演出された舞台でよくご一緒させていただくのですが、繊細で心情に寄り添った演出がすごく好きで、今回は派手なエンタメ色が強い印象ですが、きっとその繊細な部分も描きつつ、新しいエンタメ作品に仕上げてくださると思っているので、その挑戦にヒロインという立場でご一緒させていただけるのはとても嬉しいです」

哲学的な問いかけをエンタメに包んで

―――ゾンビ=捕食者というイメージが強いですが、本作では“食べる”というテーマがどの様に表現されるのでしょうか?

福地「本作は決して腐ったドロドロのスプラッターなゾンビ物ではありません。タイトルの『missing』は不足している、探しているという意味にある通り、際限のない人間の欲や愛憎が絡む大きな世界観の中で二人のラブストーリーを軸に人間とは? 生きるとは?といった哲学的な問いかけを二人の関係を通じて難しくならないように表現できればいいなと思っています」

インタビュー写真

水崎「ヤンキーの彼氏とお嬢様の彼女がどうやって出会ったのかも気になります! そういう二人の関係性を作っていくのも楽しみですね」

福地「あるある! 今日作ってきたページにしっかりあるから」

佐藤「朝、パンをくわえた彼女が出会い頭にぶつかるとかじゃないないよね!?」(一同笑)

吉野「僕自身ヤンキーキャラは初ですし、相手役がいるのも初体験なので、今回は初物づくしです。器用な人間ではないので最初は余裕ないかもしれないですが、一つひとつ作っていこうと思います!」

こだわったのは人間賛歌

―――プロデューサーとして期待したい部分はありますか?

佐藤「僕は福地くんの作品を観てきて忘れられないシーンが沢山あるので、その片鱗も見せながらエンタメとして多くの人に受け入れられる作品にしてくれると信じています。『こういう時代だからゾンビ』という図式はあまり考えていなくて、DMFがこだわってきたのは人間賛歌なんですよ。人間っていいな、生きてるって素晴らしいなという事を愚直にやってきたので、今回だから特別に意識していることはありません。綾ちゃんは僕らの作品に何度も出演してくださって僕も信頼していますし、哲平くんも今伸びている役者さんです。この規模で初めての主役という事ですが、その並々ならぬ意欲を買っています。先に進もうという気持ちさえあれば、あとは僕らが支えるという気持ちでいます」

福地節は残ります!

―――益々楽しみになってきました。最後に読者の方にメッセージをお願いします。

水崎「私が別の舞台でバナナを食べている姿を佐藤さんが見てサブタイトルの“食べちゃう彼女”というのを連想したみたいなので、もし作中で何かを食べているシーンがあればちゃんと魅せられるようにしたいです。あとは単純に役者として主人公を支えられるようにしっかり役割を果たして、お客さんに楽しんでいただけるような作品にしたいです」

吉野「自分らしくチャレンジ精神を持って意識高く取り組んでいきたいです。こんな時代なので演劇は一番必要な要素だと思っているので、劇場に来てくださったお客さんがその時間だけでも日常を忘れて楽しんでいただけるように精一杯頑張ります!」

福地「全国の福地ファンの皆様、お待たせいたしました。今回はダンスやアクション、色々な仕掛けをご用意して精一杯エンタメさせていただきます。でもいつもの“福地節”はどうやっても残ってしまうと思うので、それがどんなバランスになるのかは僕も楽しみです。新しいチャレンジが作品の幅を広げてくれると思いますし、例え何かを取りこぼしても力強い作品にしますので、是非楽しみにしていてください!」

(取材・文&撮影:小笠原大介)

キメ画像2

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