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麹レシピの代表といえばみそ汁 写真提供:糀屋本店 |
秋冬は何を食べてもおいしい季節。米、根菜、果物に魚、肉もスルスルと胃袋に収まってしまう。コロナの影響で外食する機会も減ったことで、家の中で好きなものをたくさん作れるのはうれしいが、食べすぎると翌日胃がもたれたり、体調が悪くなったりしてしまうことも。そんなときは、料理に発酵食品や発酵調味料を取り入れるとよい。体に優しく、時には食材の旨味を引き出す効果もある発酵食品の魅力について、こうじ料理研究家の浅利定栄氏に話を聞いた。(清談社 武馬怜子)
日本人と発酵食品の歴史
あの「口かみ酒」も発酵食品
発酵食品は日本人にとってとても身近な食品で、たとえば納豆、しょうゆ、漬物、みそ汁など、和食のメニューから発酵食品を抜いていくと、最後には塩おにぎりくらいしかなくなってしまう。それくらいなくてはならない食品だ。このように食材を発酵・熟成させる技術はいつ頃から日本に根付いたのだろう。
「アニメ映画『君の名は。』にも出てきた(口に入れかんだ米を発酵させて造る)『口かみの酒』、あれは日本で麹作りが始まるずっと前のお酒の造り方です。口の中の唾液に含まれるアミラーゼでお米を分解して糖を作り、それが発酵するのを待つという技法です」(浅利氏・以下同)
西暦713年以降に書かれたといわれる記録「大隅国風土記」にはもう「口かみの酒」についての記述がある。巫女が酒造りを担い、神事における崇高なお酒として飲まれていたようだ。
「しかし、そのような造り方だと多くの人に安定して供給できない。そこで、誰かが米を発酵させるやり方、つまり『麹』を発明したんでしょうね。誰がいつ始めたかはわかりません。自分たちが集めた大切な食料にカビを発生させてそれを選別、無毒化して、しかもそれを麹菌として培養する、どうしてそんな技が大昔にあったのかも謎です」
麹は大きく分けて麦麹、豆麹そして米麹の3種類。一番使いやすく、幅広く需要があるのはなんといっても米麹だ、と浅利氏は断言する。
「麹から造られるみその全国の使用頒布は7割が米みそです。麦みそは九州・瀬戸内エリアで2割程度。豆みそにいたっては中部地方で1割くらい。米の麹からは甘酒も塩麹も造ることができるし用途がほんとに広いです」
また、昔と違って現代は空調設備もあり温度や湿度が管理できるので、1年中麹を作ることができる。
「米麹の作り方を説明すると、まずお米を洗って水に漬けておきます。水を吸わせて水切りして蒸し上げ、蒸した米に麹菌をまき40度くらいの湿度が高い部屋に1晩おき、次の日に小分けにしてもう一昼夜ほど、寝かせます。だいたい2日半あれば出来上がりです」
麹が持つ栄養と効用は
「消化のアウトソーシング」
麹や加工品が人に与える影響はどんなものがあるのだろう。
「第一に、食前消化。胃に入れる前に食材に酵素が働くことで、消化活動がより少なくて済む。つまり体への負荷が少ない。私はこれを『消化のアウトソーシング(外注)』とよく言っています」
自分の体内にある消化酵素は使わずに「麹の作った酵素にやってもらう」という考え方だ。
「実際、人間の体内で酵素が一体どれくらい減っていくのかというと、20代を100と考えた場合に60代では半分くらいになってしまいます。『消化のアウトソーシング』は年齢を重ねる前にやっていればより効果的です」
食べ物を消化することを自分の体内の酵素を使わず、麹が作った酵素にやってもらえれば体内の酵素の消費を抑え若々しくいられるというわけだ。
「ふたつ目は、コウジ酸という成分が肌の色を白くしてくれるといわれています。これは美白を追い求める人にはうれしい作用ですね。あとは肌の損傷を治してくれるビタミンB群も含まれています」
さらに浅利氏は麹の持つ酵素の種類の多さにも注目している。
「麹はタンパク質を分解する酵素、デンプンを分解する酵素、油を分解する酵素などいろんな酵素が数十種類も入っています」
「酵素を調べるなら麹を調べろ」といわれるほど多くの酵素を持った食材はおそらく日本の麹だけだ。だからこそ、和食の複雑なうま味とも関係が深い。
麹レシピのおすすめ
秋冬はやはりみそ汁
「一番はみそ汁です。できればお湯を入れるだけのレトルトではなく、『酵素が生きた』パック入りのみそを使ってください。いいみそを使えば、その分酵素の働きが期待できるし、野菜や豆腐、海藻の栄養もおいしく取ることができます」
具材は好みにもよるが、秋冬ならダイコン、ニンジン、サトイモが旬を迎える。また消化に時間がかかる根菜類もほどよく煮込むことで消化が良くなり、みそに含まれるうま味ともよく合ってオススメだという。だしは取ったほうがいいが、煮ている間に野菜の甘みも出るので、みそを溶くだけでもいい。
「あとは『甘酒のスムージー』。甘酒の中にバナナとヨーグルトを入れてミキサーにかけるだけです。併せて野菜不足が気になる人は、サラダほうれん草などの野菜を加えてもいいですね」
甘酒だけで十分に甘いので、砂糖を加える必要はない。
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甘酒のスムージー 写真提供:糀屋本店 |
「私がイタリアに留学していたとき、友人に塩麹のステーキをごちそうする機会がありました。牛肉に塩麹をまぶしてもみ込み、それを焼いて召し上がってもらったところ、後日『肉を食べたのに、翌日胃もたれがなかった』とすごく喜んでくれました」
麹が消化を助けるのは万国共通。世界中に麹ファンがいるのもうなずける。
「私は比較的保守的なので、麹は甘酒、みそ、しょうゆを造るもの、という固定観念に縛られがちです。ですが、海外の料理人はそんな先入観なしでいろいろな使い方をするので、驚かされることもあります」
サラダやお茶に混ぜたり、肉に麹菌をつけて熟成させたり、うどんに麹菌をつけてマシュマロのような食感にしている店もあるという。
浅利氏はこれからの麹の新しい道を切り開くのは塩麹なのかもしれない、と話す。
「しょうゆとかみそはどうしても日本っぽさが出ます。和食の味を出したいならいいですけど、他の国の料理だと合わせるのが難しい。その点、塩麹は発酵調味料特有の香りが少ないし、何にでも合わせられる。だから汎用性が高く、どんな料理でも使えます」
日本で生まれた発酵食品、麹のポテンシャルから今後も目が離せない。
※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら
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