Wednesday, December 23, 2020

ゲノム編集食品 食べるなら納得ずくで - 東京新聞

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 ゲノム編集食品の流通が政府に了承された。新たな特質を付与された農作物などが、やがて店頭に並ぶ。だが今のところ、安全審査も表示の義務もない。安心して口にすることができるだろうか。

 ゲノム編集とは、外から遺伝子を挿入しその生物にはなかった機能を加えたり、特定の遺伝子を切り取って遺伝的性質に変化を与えたりすることをいう。遺伝子組み換えの精度を高めた技術である。

 今年のノーベル化学賞を受賞した「クリスパー・キャス9」という編集技術が開発されて効率化が進み、応用範囲が広がった。

 国内で初めて流通することになるのは、筑波大が開発したトマト。血圧を下げる効果があるGABAという成分の発生を抑制する遺伝子を切り取って、含有量を通常の約五倍にしたものだ。

 国内では肉厚のマダイ、収穫量の多いイネなどが実用化をめざしている。市場に出れば、歓迎する消費者も多いに違いない。食料の安定供給、飢餓解消に資する可能性も秘めている。

 問題は、新たな遺伝子を外部から挿入する場合には安全性審査を受ける必要があるが、それ以外は届け出すら任意でよいことになっている。「自然交配による品種改良と区別がつかないからだ」という。ゲノム編集食品である旨を表示する義務もない。消費者には選択の余地がない。

 いかにノーベル賞の技術といえども、狙いを外し、標的にしたものではない遺伝子を切り取って、思わぬ性質を発現させるリスクもゼロではない。欧州連合(EU)では「規制の対象にすべきだ」という司法判断に基づいて、表示義務が課せられている。

 東京大が一昨年、約一万人を対象に実施した調査によると、ゲノム編集の農産物を「食べたくない」と答えた人が四割強。「食べたい」は一割弱にとどまった。

 国内の食品メーカーなども研究を進めてはいるものの、消費者の不安を反映してか「今のところ製品化の予定はない」と、二の足を踏む企業が多いという。

 ゲノム編集トマトは来年夏に種の販売を開始。再来年の初めには店頭に並ぶ。

 しかし、今のままでは「食べたくない」という人も、知らないうちに口にしてしまうことになる。

 消費者の不安を取り除き、スムーズな流通を図るためにも、消費者庁はメーカー側に、せめて表示を強く求めるべきだろう。

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