Monday, March 30, 2020

着る繊維から食べる繊維へ 帝人が注目した「イヌリン」とは:朝日新聞Reライフプロジェクト - 朝日新聞

 腸内環境を整えるためには、善玉菌のエサとなる食物繊維をどのように食生活で摂取するかが大事。なかでも注目を集めつつある水溶性食物繊維「イヌリン」の研究に取り組んでいるのが、ヘルスケア分野などに事業を拡大している帝人です。天然イヌリンの高い機能性や、短鎖脂肪酸の生成を促進する“発酵力”などについて、同社の北薗さんに解説してもらいました。

帝人株式会社 機能性食品素材事業推進班長・北薗英一さん

欧州では食物繊維のスタンダード

 イヌリンは、日本ではあまりなじみがありませんが、さまざまな根菜類に含まれている水溶性の食物繊維です。ヨーロッパではチコリの根から抽出されるチコリイヌリンが古くから知られており、我々が扱っているのも天然のチコリイヌリンです。

 我々は機能性食品素材事業において腸内フローラに着目し、食物繊維を豊富に含むスーパー大麦で市場に参入しました。その次には、食物繊維をより広く社会に届けたいと考え、飲料や加工食品などに幅広く使うことのできる水溶性食物繊維のなかでも、最もメジャーなイヌリンへの取り組みを始めました。

 日本では水溶性食物繊維の主流は難消化性デキストリンですが、世界のスタンダードはイヌリン。2000億円規模とされる市場の3分の1をイヌリンが占め、欧州だけでなくアメリカやアジアでも成長を続けています。

整腸作用などの機能性表示が可能

 これまで日本では、イヌリンは主にヨーグルトなどの乳製品に使用され、飲料、パン・菓子類などにも使われてきました。市場の大きい欧州では、砂糖の代替、脂肪の代替という二つの目的で使われることが多いです。最近になって、腸内環境を巡る健康面もフォーカスされています。

 イヌリンの機能や効果に関する研究は、EFSA(欧州食品安全機関)を中心にかなり進んでいます。プレバイオティクス(腸内細菌を活性化する食品成分)としての効果など、多くのエビデンスが蓄積されています。日本では機能性表示食品に「食後血糖値の上昇抑制」「血中中性脂肪低下作用」「整腸作用」の三つの表示が認められています。

ヨーロッパで栽培されたチコリの根から抽出した天然のイヌリン

短鎖脂肪酸の生成が大幅に増加

 慶応大特任教授の福田真嗣氏がCEOを務めるメタジェンと当社の共同研究では、チコリイヌリンの腸内細菌に対する影響を、難消化性デキストリンや、砂糖から合成したイヌリンなどと比較して評価しました。試験管内の腸内細菌モデルにおいてチコリイヌリンを添加すると、短鎖脂肪酸の一種である酪酸が多く増えて、酪酸を作り出す腸内細菌も増殖しました。天然イヌリンの優れた腸内発酵特性が確認されたのです。

 酪酸、プロピオン酸、酢酸などの短鎖脂肪酸は、免疫をコントロールする役割が最近の研究でわかってきました。腸内の炎症を抑制するなど、さまざまな健康増進につながる物質とされ、大きな注目を集めています。その意味で、イヌリンを摂取して免疫力を上げるという考え方は、理にかなっていると思います。

さまざまな食品で健康ニーズに貢献

 イヌリンは食物繊維としてはもちろん、多様な用途に使える食材です。糖質オフや脂質オフ、カロリーオフといった健康増進のニーズは幅広い年代層で求められており、整腸や血糖、コレステロールに対する効果を訴求できるイヌリンは活用の場が大きいのではないでしょうか。我々は分子の鎖の長さが異なる6種類のイヌリンを扱っており、「甘味がある」「粘性が強い」「水に溶けやすい」などそれぞれの特性を持っています。食品に合わせてそれぞれの特性を生かすことによって、食品、お茶類やコーヒーに加えるなど、さまざまな形で展開することができると思います。

 欧州では粉ミルクにかなりの割合でイヌリンが配合されています。我々の実験でも、チコリイヌリンは難消化性デキストリンに比べてはるかに多くのビフィズス菌を増やすという結果が出ています。これは、腸内にビフィズス菌を定着させる時期である1歳児未満の赤ちゃんには、特に重要なポイントであると言えます。シニア世代に向けても、骨密度や認知症予防に対するイヌリンの可能性を、将来的に検証することができれば面白いですね。

 帝人は1970年代にヘルスケア事業に参入し、医薬品や在宅医療の分野でユニークな事業を展開してきました。昨今の社会保障問題などを踏まえ、もう少し手前の「未病」の分野でも、我々が培ってきた技術やノウハウで社会に貢献できるのではないかと、食を通じた健康の領域にも取り組んでいます。今年1月からは乳酸菌やビフィズス菌関連の事業もスタートさせ、腸内環境から健康増進や未病・予防に貢献していきたいと考えています。

 

北薗 英一(きたぞの・えいいち)
ヘルスケア新事業部門 機能性食品素材事業推進班 班長
1972年生まれ。97年に帝人に入社。高分子材料研究所で特殊ポリマーなど先端素材の開発を経て、再生医療のための素材開発などに従事した。2008年から米国に駐在し新規事業開発に取り組み、世界各地の企業や研究所を歴訪。16年にスーパー大麦を製品化し、原料として採用した商品が同年の「Yahoo!検索大賞」食品部門賞を受賞した。17年から現職。

(企画制作:朝日新聞Reライフプロジェクト)

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March 30, 2020 at 03:37PM
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