飼育員・閑野(しずの)さつき
【秋田】水族館前の海も波が穏やかになり、ようやく春が来ました。この時期は、季節風により海の中がかき回され、海面近くに上がってきた深海からの生き物が沿岸に現れるようになります。
ある日、いつものように海水温を測りに行くと、磯にたくさんのクラゲが流れ着いていました。ひしゃくとバケツを使い、傷つけないよう急いで採集しました。結果は体のサイズが約2センチの丸い透明なクラゲと約4センチの細長いクラゲの計20匹。他にもいないか海面を見回しながら水族館に戻りました。その間、わずか15分ほどです。水槽に移し、何のクラゲか調べる同定作業を始めようと思ったら……。
「あれ?」。クラゲが9匹しかいません。それも明らかに丸い形のクラゲが減っているのです。調べたところ、丸い方は「キタカブトクラゲ」、細長い方は「シンカイウリクラゲ」で深海からの来訪者だとわかりました。どちらも名前にクラゲと付きますが、毒は持たず櫛板(くしいた)を使って泳ぐため有櫛(ゆうしつ)動物というグループに分類されるので、正確にはクラゲではありません。毒をもつ刺胞動物が「クラゲ」なのです。そして、このシンカイウリクラゲは、キタカブトクラゲを含む、他のクラゲを食べてしまう「クラゲを食べるクラゲ」だったのです。
あの時、バケツをもう一つ持ってきて最初から分けていれば。そんな後悔をしている間にも、キタカブトクラゲはどんどん食べられてしまい、水槽には満腹のシンカイウリクラゲだけに。早食いの食いしん坊ですが、櫛板を波打つようにひらひらと動かして泳ぐ様子は、光が反射して虹色に光り、美しいです。
同じ水槽内で別種の生き物を飼育するには、生態の面を含め、相性を知っておかなければならないと痛感した出来事でした。(飼育員・閑野(しずの)さつき)
からの記事と詳細 ( シンカイウリクラゲ、なんと「クラゲを食べるクラゲ」 - 朝日新聞デジタル )
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