表紙を飾るシーンを収めようと待ち構えたカメラマンは拍子抜けしたに違いない。
甲子園史上初めてとなる兄弟校による決勝戦を制した智弁和歌山は、最後のアウトをとったその刹那、マウンド上で喜びを爆発させることなく整列に向かった。
「礼で始まって礼で終わる。礼が終わってから喜ぼうと話していた」
県大会と同じ行動をとった理由を智弁和歌山の主将宮坂厚希はそう説明したが、その姿はこれからの高校野球が向かうべき道を示しているような気がしてならなかった。
勝つことを全力で目指すけれども、それだけではない。
野球を通して、人を大事にしていく。
思えば、智弁和歌山の中谷仁監督の采配はまさに選手たちを大事にしていた。
新型コロナウイルス感染による相手校の辞退によって3回戦からの登場になった智弁和歌山だったが、2試合を終えた時点で、ベンチ入りメンバー全員出場を果たしていた。
中谷監督には一人のメンバーも無駄にしないという信念がある。
「全員が出場してみんなが勝つために役割を果たしていけるチームを目指しています。難しいことではあると思いますが、高嶋(仁)先生が作ってこられた智弁和歌山は勝たないといけません。その使命感を持ちながら(全員出場を)やり遂げたい」
「投手が壊れたら終わりって、おかしいですよね」
なかでも投手起用は見事だった。
中谷監督は就任以降、複数投手の育成に力を注いできた。今大会は5人の投手をベンチ入りさせ、全員を起用した。1試合少なくなったため「伊藤大稀にしても、高橋令や塩路柊季、武元一輝にしてももっとイニングを投げさせたかった」という心残りがあるようだが、この言葉にも中谷の指揮官としての矜恃がある。
拙著『甲子園は通過点です』の中で、中谷はこんなことを話している。
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