日本には様々な料理があふれています。まさに飽食の時代です。その一方で、もったいないことに、多くの食材が食べられないまま廃棄されています。料理研究家の土井善晴さんは言います。「現代の日本では食べることがストレス解消になっているのです」と。
日本の食卓には世界の料理
――日本の食はボーダーレス化が進んでいます。 日本の家庭では世界中の料理が並びますが、世界的にはそんな国はないんじゃないですか。中国人は中国料理を食べますし、韓国人は韓国料理を食べます。フランス人もフランス料理しか食べません。普段から外国料理に親しむことなんてないと思います。 その点、日本人はいろんなものを食べるなあと思っています。日本には海の向こうからいろんなものやってきて集まるんですね。日本にはそれを受け入れてしまう性質があると思います。食材もあふれています。冷凍食品の種類も多いですし、お総菜も売っています。世界中の調味料やスパイスも集まっています。でも、そんな調味料も、全部使い切れないでしょう。賞味期限が切れて結局捨ててしまっていると思いますよ。 とにかく、食べ物が、大量に捨てられている。それも経済ですから、お金にとっては悪いことではないのかもしれません。でももうこれ以上、こんなことはできない、違うやり方を考えないと未来はないでしょう。無駄が過剰になりすぎて、地球環境を破壊し、人類の危機がそこまで迫っています。それは、誰もがすでに知っていることですね。 ――だから一汁一菜なんですね。 一人ひとりができることは、自分の食事を改めること。私たちには一汁一菜という食事の型があります。実行すれば健康にもなりますよ。 地球のためにもなります。 現代の日本人は食べることでストレスを解消しているのです。外で神経をすり減らし、家に帰るとほっとして、つい食べてしまう。ダメな傾向です。
トロを食べて満たされるのは快楽的本能
――わたしも太っています。確かに食べることでストレスを解消している気がします。 人は悲しくても、怒っていても食べるんです。食べると少し癒やされます。食べるというのは生きていく、生命維持の本能です。頑張って働くモチベーションになるように、食べる喜びをご褒美としてもらったのです。だから、「働かざるものくうべからず」は真理です。マグロのトロを食べることで満たされるのは快楽的本能です。現代人が大好きな焼き肉もハンバーグでも同じです。 でももう、日本人はおいしいものものばかり食べなくても良いんです。和食は、おいしさに依存していないのです。旬のものを取り入れ、季節を感じる。だから初ものと盛りものと、名残ものでは、一つの野菜でも全く別もののように料理して、その変化を楽しむでしょう。食事に彩を取り入れ、歯切れの良さといった食感を楽しむのです。 味に依存せず、変化を楽しむというのは、精神的な喜びです。変化を知ることが感性です。みずから知ることは喜びです。食事をしながら、心を野山に遊ばせるのです。きれいに整えられた料理に、私たちの食事の満足があるのです。おいしいものばかりに執着することは、心の豊かさや美しいものをずいぶん捨ててしまうことになるでしょう。 どんな料理も売っていますから、全てお金で解決し、自分で料理しなくても済みます。でも、人間は料理する生き物です。食べるよりも、料理することが大切なんです。料理する手の仕事には、不思議な力があって、肉が大好きで、外食で肉ばかり食べている男性でも、自分で料理をしてみると、「肉ばかりじゃいけない」と思えて野菜を鍋に入れるものなのです。自分のために料理してもそうなるのですから、家族のためとなるとなおさらです。 料理には他者を思う、思いやりがおのずから入ってくる。それが「利他」です。「料理する、すでに愛している。料理を食べる、すでに愛されている」です。 今では料理をしない家もあるのでしょう。それでは、料理のないところには安心の安らぎも生まれませんから、家族さえ信じられないのです。あなたが料理して、仲間に食べさせればそこに家族ができるのです。料理すること、料理したものを食べること、で家族になるのです。特に日本の場合は、そうしたことになると考えています。
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