Friday, January 10, 2020

食べるフィールド言語学――「Food×風土」の視点から - 読売新聞

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 2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催年となりました。今年は、世界各国から多くの訪日外国人や旅行者が訪れます。「食」は生活に身近なだけに、異文化間ギャップが最もあらわれやすいといえるでしょう。今年一回目となる大手町アカデミアでは、食文化研究に実績のある国立民族学博物館による講座を開催いたします。本講座では、フィールド言語学者の吉岡乾氏を講師に迎え、パキスタン北部のフィールドワークをいきいきと報告しながら、文化や言語の多様性を「食」の面から考えます。ナビゲーターの野林厚志氏は、『肉食行為の研究』の編著があるなど、食文化に精通した研究者です。

 講師の吉岡氏からは、今回の講座内容について以下のようにご紹介いただいています。言語学的な食文化へのアプローチとは? 研究者の「生みの苦しみ」を感じられる講座です。ぜひ、ご期待ください。

(講師による講演内容の紹介)
 言語あるところにヒトはあり、ヒトのあるところには食もある。フィールド研究者は現地に入ると普通、当然ながら現地の言語を話し、当然ながら現地の料理を食べます。やれ学際研究だ、やれ異分野融合だと言われる昨今、例えば、言語学と食文化とを関連付けた研究なんていうのはできないものだろうか。できるのだとしたら、どういう研究が考えられるのだろう。もうすでに何かあるだろうか。

 フィールド言語学者である講師(吉岡)が、調査地としているパキスタン北部の山岳地帯で、舌に合わない地元飯を食べながら考えた、言語学的な食文化へのアプローチ。言語学が科学である以上、言いっ放しの感想文にならないよう、研究に客観性を確保しつつ何が言えるのかを摸索しなければなりません。そうした中で見出したトピックである「味覚」での研究活路開拓を目指し、昨夏、実際に現地へ行って予備調査をして来ました。本講座では、その調査の様子と、そこでの(小さな)発見・気付き・思い付きについて、ご紹介をしようと思います。

 地域が異なれば、片や食文化が異なり、一方で言語も異なります。ならば「風土」をキーワードに、言語と食とを改めて結び付けられないだろうか。無理繰りのアクロバットな思索からアイディアは創発しないだろうか。食文化研究に精通している人類学者のナビゲーター(野林)から、巧いことヒントを引き出せないだろうか。研究者が陥りがちな「専門バカ」への道から、異分野の垣根を越えることでの脱却を求めて四苦八苦するといった人間味をも、講座全体を通して観察できそうです。

※企画内容、時間などは予告なく変更になる場合があります。
※定員に達しますと受付終了となりますが、空席が生じますと自動的に受付を再開いたします。随時受付状況はご確認ください。
※講師の急病や天災その他のやむを得ない不可抗力の事情が生じた場合は、当日でも講座を中止することがありますのでご了承下さい。

 講演に先立ち、18時00分の開場から18時30分の開演までの間、国立民族学博物館の紹介動画を上映することが決定いたしました。リピート上映をする予定ですが、時間に限りもございますため、ご視聴を希望される方は、開場時間にあわせてのご来場をお願いいたします。

吉岡乾(よしおか・のぼる=写真左、国立民族学博物館 人類基礎理論研究部・准教授)

 専門は言語学・南アジア研究(特にパキスタン北部)。2012年、東京外国語大学大学院地域文化研究科より博士号を取得。日本学術振興会の特別研究員PDを経て、2014年より国立民族学博物館。著書に『なくなりそうな世界のことば』(創元社、2017)、『現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。』(創元社、2019)がある。

<メッセージ>
 40歳を「不惑」などと言いますが、昨今の研究業界ではその辺りまでを「若手」と呼びます。若手のうちはあれやこれやにチャレンジして、道探しをしても良いのではないか。失敗も積み重ねれば何かになるかもしれない。などとごにょごにょ言っているうちに、とうとう迷いを抱えたままに40歳を迎えてしまい、いっそう当惑しました。

 とは言え、世の中、やってみなければ分からないことは多くありますよね。それは研究・調査も、その他の人生のアレコレも。最初から失敗をしないようにと努めるより、失敗をしてもそれを巧く活かして次に繋げられるようにと努めたほうが、やがては長じていったりしないものでしょうか。長じていって欲しい。そんなことをつらつらと思いつつ、まったりゆったりと構えていたいものですが、そうもさせてくれない窮屈な環境というのが今時の社会には多い気がしまして、つまり、中々どうして残念です。

 今回の講演では、僕の専門分野である言語学から、ほぼ全身を踏み出したところの話をします。

野林 厚志(のばやし・あつし、国立民族学博物館 学術資源研究開発センター・センター長・教授)

 専門は人類学、民族考古学、台湾研究。東京大学大学院理学系研究科博士課程中退。1996年より国立民族学博物館。著書に『イノシシ狩猟の民族考古学 台湾原住民の生業文化』(御茶の水書房。2008)『タイワンイノシシを追う――民族学と考古学の出会い』(臨川書店、2014)、『肉食行為の研究』(編著・平凡社、2018)他多数。

<メッセージ>
 今年の1月に世界的に権威のある医学雑誌ランセットにとても気になる記事が掲載されました。「人新世における食-持続可能な食システムからの健康的な食事に関するEAT-Lancet委員会」と題するこの論考では、来たる地球人口100億人時代を健康に迎えるための食生活を提案しています。とはいえ、欧米の研究者が中心のこの委員会が提唱する食品からは、ヨーロッパのカフェで食べるような豆いりサラダは作れそうですが、和食や筆者がこよなく愛する台湾の小吃の趣は感じられないというのが正直な印象です。

 世界中の人々はさまざまな環境の中で食生活を営み、それを継承してきました。グローバル化がすすみ、科学や健康といったユニバーサルな価値観を認める一方で、「今」「ここで」、人間は何を食べ、何を感じているのかをひもとく意義を今回、考えてみたいと思います。

 国立歴史民俗博物館、国文学研究資料館、国立国語研究所、国際日本文化研究センター、総合地球環境学研究所及び国立民族学博物館の6つの機関で構成されています。

 人間文化研究機構では、国内外の大学等研究機関や地域社会等と組織的に連携し、現代的諸課題の解明に資する「基幹研究プロジェクト」を進め、人間文化の新たな価値体系の創出を目指しています。http://www.nihu.jp/ja/research

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