Monday, July 1, 2024

「半夏生」ってどんな日か知ってる? 関西で半夏生にタコを食べる人が多い理由 - ウェザーニュース

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2024/07/01 05:04 ウェザーニュース

かつては夏至から数えて11日目にあたる日、現在は太陽が天球上の黄経100度通過する日を「半夏生(はんげしょう)」といい、2024年は7月1日になります。

この日に合わせてタコを食べる風習が、主に西日本で古くから続いているそうです。

ウェザーニュースでは、「半夏生にタコ食べる?」というアンケートを実施しました。「毎年食べる!」「食べたことがある」「食べたことがない」の3項目を挙げてウェザーニュースアプリの利用者に尋ねたところ、全体で見ると「食べたことがない」が79%と、多数を占めました。

そのなかでも「毎年食べる!」「食べたことがある」の回答が多かった地域は、やはり関西が35%と一番多く、中国・四国地方が29%で続きます。

都道府県別では兵庫が40%、奈良が38%、京都が36%、大阪・和歌山が34%と関西勢が上位を占める結果となりました。

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半夏生は農作業の節目、「雑節(ざっせつ)」の一つ

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半夏生とはどんな日なのか、なぜ関西の人たちはその日にタコを食べるのかなどについて、歳時記×食文化研究所代表の北野智子さんに伺いました。

まず、半夏生というのは、どのような日なのでしょうか。

「半夏生は土用や八十八夜と同じく、日本独自の暦(こよみ)である『雑節』のひとつです。7月2日が多いのですが、今年は7月1日がこれにあたります。中国由来の旧暦(太陰太陽暦)『七十二候(しちじゅうにこう)』では、この日から5日間を『半夏生ず』としています。

半夏生は農作業の大切な節目とされています。この時季は『半夏雨(はんげあめ)』と呼ばれる大雨になることが多いので、それまでに田植えを終えないと『半夏半作(はんげはんさく)』といって、収穫が半分に減ると伝えられてきたそうです」(北野さん)

半夏生という言葉そのものには、どんな由来があるのでしょうか。

「半夏とは、カラスビシャクというサトイモ科の山野草のことです。面白い名前の理由は、苞(ほう)の部分をカラスが使うほどの小さな柄杓(ひしゃく)に見立てたからです。不気味で嫌われもののカラスが、小さな柄杓を使ってチマチマと水浴びなどをしているところを想像すると、ほほ笑ましく感じます。

カラスビシャクは夏の半ば頃に生え始めることから『半夏』、その時季を『半夏生』と呼ぶようになったのでしょう」(北野さん)

田植えを終えて、タウリン豊富なタコで元気回復

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西日本、特に関西で半夏生にタコを食べる風習があるのはなぜなのでしょうか。

「昔から河内・和泉(大阪府)や近江(滋賀県)、大和(奈良県)など、関西の米の産地の農村では、田に植えた苗がタコの足のように地に根付いて豊作になることを祈り、田植えを終えるとタコを肴(さかな)に一杯飲んで、お互いの労をねぎらいました。

『半夏蛸(はんげだこ)』と呼ばれたこの習わしは、とても理にかなっていると思います。きつかった田植えまでの農作業を終え、これからの厳しい夏を過ごすため、タウリンを豊富に含むタコは体によく、元気をつけてくれるからです。

また、これらの地域では、半夏生には『毒気が天から降る』と信じられていました。そのため、青果を食べたり井戸水を飲んだりしてはいけなかったそうです。

そのためこの日は、古くから解毒作用があるとされてきたタコを食べて、身体の毒を洗い流したともいわれています」(北野さん)

関西には明石や泉など、おいしいタコが身近に

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半夏生の頃のタコは、味もいいのでしょうか。

「半夏生から夏に向けた時季に水揚げされたタコは『麦藁蛸(むぎわらダコ)』と呼ばれ、おいしさが増します。麦藁蛸は、麦が実ることから麦秋といわれる初夏に獲れるマダコのことで、皮が柔らかく1年のうちで最もおいしくなるといわれています。

瀬戸内海の明石ダコ、大阪湾の泉ダコなど、昔からおいしいタコが身近にあったことも、関西で半夏生以降の夏場にタコを食べる、大きな理由でしょう。

大阪ではタコは“ハレの食”で、昔から『天神蛸』と呼ばれて夏祭りのご馳走としても欠かせません。例年7月25日に本宮が催される大阪天満宮の天神祭には、タコは鱧(ハモ)と共になくてはならない行事食です」(北野さん)

関西の方は半夏生など夏場のタコを、実際どのようにして食べるのでしょうか。

「わさび醤油や酢味噌をつけて食べる『タコぶつ(ぶつ切りにしたタコの名称)』、さっと塩をふったキュウリと合わせた『タコとキュウリの酢もみ』などです。

私は大阪人で実家が海産物を商っていたこともあり、夏の膳にはそれらが週に3~4回、ほぼ一日おきぐらいに登場していた記憶があります。もちろん半夏生には、毎年タコを食べていました。半夏生の行事食に限らず、私たち大阪人は本当にタコ好きだと思います」(北野さん)

タコ以外にも、半夏生ならではの食文化?

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関西の半夏蛸以外に他の地域でも、半夏生ならではの食文化が存在するのでしょうか。

「半夏生には、麦の収穫祭の意味も込められているようです。香川県では農家の忙しさがひと段落した半夏生の頃、麦刈りや田植えを手伝ってくれた人たちに、うどんを振る舞い、労をねぎらう習わしがあったといいいます。

関西でも山間部にあたる奈良県吉野川以北の郷土菓子に、半夏生の日に食べられる、小麦ともち米を混ぜた餅に黄粉をまぶした『半夏生餅(はんげしょうもち)』があります。他にも小麦団子を食べる地方があるようです。

昨今は中山間部などに住んで自給自足を目指す人や、田畑を借りて作物づくりに汗をかく人々が増加しています。半夏生の田植え後にタコを食べつつ、互いの労をねぎらうという素朴で素晴らしい風習が復活することを、個人的に願っています」(北野さん)

タコは今年に入り円安の影響などで、特にアフリカ・モーリタニア産の輸入量が激減し、価格も高騰しているようです。国内産のタコも含めて今夏は気軽に食することは難しいかもしれませんが、田植えや麦刈りの大変さも心に留めつつ、半夏生のタコを味わってみてはいかがでしょうか。

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参考資料
『大阪食文化大全』(笹井良隆/西日本出版社)、『年中行事事典』(田中宣一・宮田登編/三省堂)、『日本の七十二候を楽しむー旧暦のある暮らしー』(白井明大/東邦出版)、『日本各地の味を楽しむ 食の地図』/岸朝子監修/帝国書院

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参考資料など

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