Tuesday, October 20, 2020

「陸上で食べるのは無理ゲー」東京五輪を目指さなかった元オリンピア 大量の引退を見越して決断した投資(withnews) - スポーツナビ

男子陸上800mでロンドン五輪にも出場した横田真人さん(32)は、東京五輪の機運が高まる2016年に、あえて「引退」を決意しました。「陸上では一生食べていけない」とわかった上で、中距離走を突き詰める道を選択。東京五輪後、アスリートの“引退ラッシュ”が起こることを見越した決断でした。アスリートは、競技後の人生についても考えるべきだと警鐘を鳴らす横田さんに、セカンドキャリアを築く上で大切なことを聞きました。(ライター・小野ヒデコ) 【画像】「取材はほとんどなく、ちやほやされませんでした…」現実を知ったロンドン五輪800m走での写真

最初から「陸上では食べていけない」と自覚

<ロンドン五輪に出場し念願のオリンピアンになったが、競技環境に変化がないことを実感。陸上競技の現実を思い知った> 私が本格的に陸上競技を始めたのは高1の時でした。大学卒業後も陸上を続けようと思ったのは、国内では認知度が低い中距離走を極めようと思ったのと、五輪に出場してみたいという夢があったからです。その一方で、最初から「陸上では食べていけない」と自覚していました。 努力の末、2012年のロンドン五輪の男子陸上800mにおいて、日本人選手としては44年ぶりの出場を果たしました。結果は、予選5組4着で予選敗退。念願の五輪出場を果たせたことはうれしかったのですが、オリンピアンになっても状況は何も変わらない現実を思い知りました。 取材はほとんどなく、周りから「ちやほや」されませんでしたね(笑)。今となっては、この時点で現実を知ったため、夢想家にならずよかったと思っています。 五輪後、陸上のスキルをもっと磨きたいと思い、活動拠点をアメリカのロサンゼルスに移しました。同時期に、男子陸上400mハードル選手の為末大さんも近くにいたので、お茶をしたり、為末さんのご自宅にお邪魔したり、よく話をしていました。

米国公認会計士の資格を取得

<「北京五輪のメダリスト言える?」。為末大さんの質問に答えられず、心の底から「やべぇ」と思った> 当時の為末さんは、現役を続けるか否か、引退したらその先どうするかなどについて思い悩んでいました。そんな中、為末さんから「北京五輪(2008年開催)のメダリスト言える?」と聞かれたことがありました。「えっとー…」と考えつつ、名前が出てきたのは数人。実際は25人のメダリストがいて、金メダリストは9人もいたのに、ほとんど覚えていなかったんです。 「それがアスリートの現実」。そう為末さんに言われた時、心の底から「やべぇ」と思いました。有名選手の為末さんでさえ、引退後のことで悩んでいる現実を知り、「陸上競技界で生き残るのは“無理ゲー”(難易度が高くクリアが無理はゲームの例え)だ、逃げよう」って思ったんです。 そこからは、プロアスリートとしてスポンサーから求められた結果はきちんと出しつつ、並行して自己投資をすることを決め、英語と金融の勉強に力を入れました。そして、富士通陸上競技部に在籍中に米国公認会計士の資格をとりました。 アスリートの中には、厳しい現実を言われても「自分は違う」と思い込む人もいます。私の場合は、幸いにも為末さんという人がアスリートのリアルを教えてくれて、その話がスッと自分の中に入ってきたので、冷静に現実をとらえることができました。

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