昼は毎日外食、夜は接待に飲み会、朝は時間がなく何も食べない――。健康は気になるけど、毎日忙しく過ごすビジネスパーソンが「規則正しい、理想に近い食生活」を実行するのは不可能に近いだろう。
それでも、できるだけ健康でいるためにはどうしたらよいか、気にならない人はいないはずだ。難しいことはよく分からないし、できるはずもないけど、もしも「せめてこれだけは実践しよう」という健康情報があれば……!
20年以上食生活ジャーナリストとして活躍する、月刊誌「栄養と料理」の元編集長・佐藤達夫氏の近刊『外食もお酒もやめたくない人の「せめてこれだけ」食事術』(ウェッジ)では、そんな人々の願いを叶(かな)える「せめこれ」情報を提供する。1回目は、分かっていてもなかなかしっかり食べるのが難しい朝食に関して、「せめこれ」食事術として「最後の手段」をお伝えする。
栄養学的には「朝食が最も充実している」のが理想
健康のためには規則正しい生活習慣が基本となる。そして、規則正しい生活習慣は規則正しい朝食の摂取からスタートする。私たちの体内には、身体機能がほぼ24時間のリズムで動くようにコントロールするための時計=体内時計が備わっている。朝、太陽の光を浴びることと朝食を食べることで、この体内時計がスタートすると考えられている。
そのため、毎日決まった時間に朝ご飯を食べることは健康生活の基本中の基本となる。にもかかわらず、日本人男性の朝食欠食率は約15%、女性のそれは約10%もある。とりわけ20代から40代男性では約3人に1人がまともな朝食を食べていない(『平成29年国民健康・栄養調査結果の概要』)。働き盛りのビジネスパーソンがこういう状況では、健康的な生活どころか、本来持っている能力を仕事に発揮できないのではないかと、筆者は危惧する。
朝食はこれから始まる一日の活動源なので内容的には「三食のうちで最も充実しているべき」だという主張もあるし、「三食の食事内容をできるだけ均等化すべき」だという栄養学者もいる。しかしそれがなかなかできない。日本人の食習慣としては「朝は軽く、昼はそれなりに、そして夜はたっぷり」というパターンが定着している。
一日に三食を食べる人の場合、食事と食事の間の時間は、朝と昼の間が4〜5時間、昼と夕の間が6〜7時間、そして夕から翌日の朝の間が10〜12時間くらいだろうか。夕食から朝食までの時間が圧倒的に長い。プチ断食といってもいいくらい(英語のブレックファストというのは「断食をやめる」という意味らしい)。
いくらその間は寝ている時間が長いとはいえ「朝飯前」の身体はカロリー源や栄養素がかなり不足している。朝食を食べないということは、身体に相当な負担を強いることになるであろうことは、想像に難くない。そのため、朝食こそ栄養バランスがよく適量であることが求められる。
しかし、それが難しいことも承知している。もし、この記事を読んでいる人の中で、このことができている人がいたら、この項目は読まずに次に進んでよい。何らかの事情で「朝食を食べてないけど、健康のことが気になる」という人だけ、この先を読み続けてほしい。ここに書いたのは「できればこのくらいは食べてほしい」から「まったく食べないよりはまだまし」というレベルの朝食情報。

まずとりたいのは「糖質」と「タンパク質」
もちろん、多忙なビジネスパーソンだって、五大栄養素(タンパク質・脂質・糖質・ビタミン・ミネラル【注】)+食物繊維がバランスよく揃(そろ)った朝食がいいに決まっている。でも比較的ゆっくりと食べられる夕食でさえ、それを揃えるのはなかなか難しい。ましてや急いで食べる朝食では、それは無理な注文。
朝、優先的に身体に補給したいのは糖質とタンパク質。糖質は体内で素早くブドウ糖に変わる。血液中のブドウ糖(血糖)は、脳細胞が利用できる唯一のカロリー源。血糖値が最も低くなる「朝飯前」は、脳細胞が最も働きにくい状態だ。朝食で糖質を体内に入れて、脳細胞が効率的に働く環境を整えなければならない。朝食抜きのビジネスパーソンは、午前中は自分の実力を発揮できてない可能性が高いと危惧する。
タンパク質というのは、筋肉や臓器の原料である。私たちの身体はタンパク質でできているといっても過言ではない。同時に、タンパク質が分解してできるアミノ酸は、身体の各部が正しく機能するために重要な働きをしている。血液中のアミノ酸が不足している「朝飯前」は、食べ物からアミノ酸を(その原料であるタンパク質食品を)速やかに補ってやる必要がある。
糖質というのは(甘い物という意味ではなく)主食になる食材、つまり、ご飯・パン・麺類。タンパク質食品というのは、牛乳・乳製品、卵、肉、魚、大豆製品など。この両方を比較的簡単に一緒に食べられる物といえば、例えば、卵かけご飯や納豆ご飯(これに野菜入りの味噌(みそ)汁が付けば理想的)、あるいはハムサンドや卵サンドやチーズサンド(これに牛乳が付けば理想的)。
外食店を利用するのなら、牛丼屋のソーセージエッグ定食や納豆定食をすすめる。ハンバーガーやホットドッグが好きならそれでもOK。ただし飲み物はコーラではなくミルクにする。ミルクが苦手な人はヨーグルトに。
これらに加えて(経済的に余裕のある人・余裕のある日は)果物をプラスする。種類は何でもよいので、その季節で最も安い旬の果物を! 果物と野菜に期待するのは主としてビタミン類。プチ断食状態が続いた「朝飯前」はこれらも不足しているので、速やかに食べ物から補給したい。もちろん野菜でもいいのだが、野菜は「簡単に食べる」というわけには、なかなかいかないだろう。ということで、果物。
【注】 タンパク質・脂質・糖質という「カロリー(正確にはエネルギーという)を持っている3つの成分を、以前は「三大栄養素」と呼んでいた。しかし「カロリー(エネルギー)を持っている」というだけで「三大」という表現は適切ではない、ということで最近は「エネルギー産生栄養素」と呼ぶようになった。これにビタミンとミネラル(この2つはエネルギーを持っていない)を加えて「五大栄養素」という。
最後の手段・食べないよりはましの「だけ朝食」
「これも無理」という人は、仕方ない……。糖質かタンパク質かビタミン類のうちの「どれかしら」を補給しよう。
- シリアルと乳製品
- おにぎりと果物
- バナナとヨーグルト
- ブドウパンやクルミパンと牛乳
- チーズパンとジュース
それもだめなら、もう最後の手段=「だけ朝食」。ほんとに「食べないよりはまし」程度。
- 乳製品だけ
- 果物だけ
- 肉まんだけ
- ゆで卵(コンビニのおでんも可)だけ
- スムージーだけ
- 野菜サラダだけ
最後に紹介した「だけ朝食」を実践するに当たっては、3つだけ覚えておいてほしいことがある。
(1) これは「食べないよりはまし」という手段であり、本来はきちんとした朝食をとるほうがいいということを忘れないこと。そして、できればなるべく「本来の食事」パターンのほうへと移動すること。間違っても逆の方向――例えば菓子パンだけやケーキだけ、あるいはサプリメントだけ――のほうへとはズレこまないように。
(2) これはビジネスパーソンの最後の手段なので、子どもには適用しないこと。朝食が持つ意味は「栄養成分の提供」だけではない。とりわけ子どもにとって食事は「好ましい食習慣を身に付ける」ための優れたツールでもある。子どもは食事を見て「健康のためにはこういう物を食べればいいんだ」ということを学ぶ。いくら時間がなくとも、栄養成分が整い・食文化を反映し・安全性も学べる教材を朝食(に限らず全ての食事)で示したい。
(3) 朝食をしっかり食べようとしたら、朝食だけに留意していてもダメ。朝の体調は前日の夜の過ごし方に大きな影響を受ける。寝る直前には飲食しない、夕食を過剰には食べない、夜はできるだけ早く寝る……これらのことを実践すれば、朝は早くに起きられるし、食欲も出る。
理想をいえばキリがないのだが、少なくとも何も食べずに会社に出掛けるという習慣だけは、今日からやめよう!
著者プロフィール

佐藤達夫(さとう たつお)
食生活ジャーナリスト。1947年千葉市生まれ、1971年北海道大学卒業。80年から女子栄養大学出版部へ勤務。月刊『栄養と料理』の編集に携わり、95年より同誌編集長を務める。99年に独立し、食生活ジャーナリストとして、さまざまなメディアを通じて、あるいは各地の講演で「健康のためにはどのような食生活を送ればいいか」という情報を発信している。食生活ジャーナリストの会元代表幹事、日本ペンクラブ会員、元女子栄養大学非常勤講師(食文化情報論)。著書・共著書に『食べモノの道理』、『栄養と健康のウソホント』、『これが糖血病だ!』、『野菜の学校』など多数Webサイトはhttp://tanakakeitaro.link/
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