7月31日早朝、北朝鮮は東部から日本海に向けて2発の飛翔体を発射しました。韓国軍はこれを短距離弾道ミサイルだと推定しましたが、翌8月1日に北朝鮮のメディアは「大口径誘導多連装ロケット」の試射を行ったと発表しています。
7月31日に発射された飛翔体について韓国軍の観測数値では水平距離250km、最大高度30kmを飛んだと合同参謀本部から発表されています。これは発射角度が浅い弾道(ディプレスト軌道)であり、しかも高度がかなり低いため空気抵抗の影響を大きく受けてしまい飛距離が稼げません。試射時の空気抵抗の影響を加味した上で、この飛翔体を最もよく飛ぶ角度で発射した通常軌道の場合は400~500km近くは飛べる計算になります。そのため、観測数値が正しいのであれば韓国軍が短距離弾道ミサイルと判断したのは妥当なものでした。北朝鮮版イスカンデル短距離弾道ミサイル(KN-23)を発射条件を変えて試射したと考えられたのです。
しかし翌8月1日の北朝鮮の発表ではイスカンデルではなく大型ロケット弾でした。過去に確認されている北朝鮮の多連装ロケットで最も大きなものは300mm8連装ロケット「KN-09」で、2016年の試射の際は水平距離200km、最大高度50kmでした。これがKN-09の通常軌道であり最大射程であるとすると、今年7月31日に発射された飛翔体はKN-09の性能を大きく超えています。KN-09の改良型か、あるいはより大きな直径400mm級の新型ロケット弾である可能性が高くなります。
8月1日午後に朝鮮中央テレビが7月31日に発射された「大口径誘導多連装ロケット」の映像を公開しました。発射機には映像にモザイクが掛けられ詳細が分かりませんでしたが、KN-09より大きなロケット弾を搭載したランチャーをキャタピラ式の車両に搭載しているように見えます。また発射されたロケット弾についてはKN-09のように尖端部分に小さな操舵翼を装着していることが不明瞭な映像ですが確認できます。これは簡易な誘導方式であり、イスカンデル短距離弾道ミサイルのように滑空しながら上下に軌道変更を繰り返す複雑な飛び方はできません。ロケット弾は単純な放物線を描いて飛ぶので迎撃そのものは容易です。しかし多連装であるので数が撃てます。複数発射機で一斉射撃して何十発と同時に撃ち込む飽和攻撃を仕掛けることで、迎撃を突破する方法です。
大型ロケット弾は日本までは届きませんが韓国にとっては大きな脅威です。北朝鮮は7月25日に短距離弾道ミサイルを発射し7月31日に大型ロケット弾を発射しましたが、8月5日から米韓合同演習「19-2同盟」が開始されることに合わせて更なる反発を示す威嚇行為を行ってくる可能性があります。
2019-08-01 08:26:00Z
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20190801-00136636/
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